「片方が外国人」というだけでなぜ?

「片方が外国人」の同性カップルは日本から出ていけということ? 金銭的不利益、ビザ、親権…世界の常識からかけ離れた冷遇ぶりの実態_2
アンナさんは昨年3年ぶりに帰国。バルセロナでリョウさんを家族に紹介した

結婚によって得られるものは、異性愛者同士の場合、夫婦となる幸福感や社会的立場の変化に注目しがちだが、それはあくまでも個人的なもの。
婚姻制度の枠組みの外にいるということは、扶養控除や遺族年金受給の対象外になるなど金銭的不利益も大きい。つまり日本に住む者として当然の権利を享受できないということだ。

「それに、同性婚を認めるか否かという議論において、片方が外国人である僕らのようなケースは完全に置き去りにされていますよ」

日本では、日本人と外国人の異性カップルが結婚した場合、入管法で定められた「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができる。いわゆる配偶者ビザだ。通常申請から1〜3ヶ月で取得でき、日本在留の権利や就業・就学などの自由が手に入る。

対して、同性カップルは法律上の婚姻が認められていないため、配偶者ビザが発給されず、配偶者として在留資格を得ることができない。すなわち、日本からの出国を余儀なくされることになる。

子供がいるケースでは、事態はより深刻だ。日本人・外国人問わず、日本で同性カップルが子供を養育する場合、親権はカップルのうちどちらか1人だけに与えられる。仮に外国人の親がそれを持つことになれば、出生地主義をとらない日本では、子供は日本で生まれていても日本国籍を取得できない。
万が一、親権を持つ外国人の親が先に死亡したら、子供と、残された日本人パートナーには戸籍上つながりがないことになる。
このように外国人LGBTQカップルには日本人同士の同性婚にはない、複合的な問題が生じるのだ。

「なんとか2人一緒に日本に居つづけられないか」

アンナさんとリョウさんは、配偶者ビザ以外のビザを取得する方法を模索し、経営・管理ビザの存在にたどりついた。外国人が日本で会社を設立し、事業の経営や管理、または投資を行うなどして取得できる在留資格だ。
事業の安定性と継続性を立証する必要があり、商法や入管法など専門的な知識を要するため、個人で申請することは難しいと言われている。

2人は、外国人ビザ問題に詳しい司法書士や行政書士に相談した。リョウさんの既存の会社を合同会社化し、アンナさんは幸い経営者ビザを取得することができた。

「やらないかんことが山ほどあって、金銭的にも精神的にもしんどいです。男女やったら紙一枚(婚姻届)出すだけですよ」