転職エージェントへの登録より前にするべき「準備運動」

——ここまでのお話で、従来の転職フローはエネルギーを使い消耗する印象があります。

ここは転職市場の問題点でもあると感じています。転職エージェントはとても頼りになる存在です。特に、初めての転職だったり忙しい人にとっては心強いパートナーです。ですが、実は、転職志望者が目にする「転職エージェントや転職サイトの広告」と、現場のエージェント担当者が思ってることに構造的なずれが生まれています。

広告を打つ転職エージェント会社自体は、より多くの転職志望者を集めたいと思っています。だから、なんとなく転職を考えている人やあまり考えてない人も含めて、気軽に登録してもらいたいんですよね。

一方、現場の転職エージェント担当者は「志望者に転職してもらうこと」が仕事なので、とにかく就職先を紹介してマッチングすることが先決です。しかし登録者が多すぎるので、じっくりキャリア相談やフォローをする時間があまりに少ない。つまり、「本気で転職すると決意している人を優先するしかない」状況です。

私は転職エージェントの育成の仕事をするので、現場のエージェントの悩みも聞きます。「本当は一人一人しっかりフォローしたいが、転職しようか悩んでいる人にかける時間はどうしてもない」と悩んでいます。

こうしたズレによって、転職エージェントに登録してもなかなか転職先が決まらないという状況になりやすいんです。

「この会社、もう辞めたい」と新年度早々に思ったら? 退職学®️の研究家が教える「ストレスのない転職」に必要な“エージェント登録前の準備運動”とは_2

——転職エージェントが手一杯の状況下で、転職者自身が転職成功のためにできることは何でしょうか。

転職エージェントのフォローを受ける前に、自己分析やキャリアの棚卸しをしっかりと行うことです。転職活動の始まりは、とりあえず転職エージェントや転職サイトに登録することではなく、自身の棚卸しという"準備運動”から始まるのが理想なんです。

準備運動の最初にやってほしいのは、自分の強みを見つけること。強みは新しく探すよりも、自分の中から見つけ直すのがおすすめです。普段からスムーズにできる業務や、特にストレスなく実施できるアクションが、あなたの強みである可能性が高いです。学生時代の活動も、強みのヒントになります。

また、休職や無職、早期退職、リストラなど自身が弱みだと判断しているエピソードを、応募先の企業が知りたがっていることもあります。

近年の経営者の中には、社員の育休や産休、介護休職などの事情に対応するために、より社員のことを知ってセーフティネットを作ろうとする人も増えています。こうした会社では、先に弱みを伝えていたほうが安心してもらえるのです。特に、経営者や役員のプロフィールを見て自分と近しい経験をしていたら、開示することは大切です。

これ以外にもさまざまな準備方法があり、『ゼロストレス転職』(PHP研究所)でも紹介しています。しっかりと準備をした方は、転職エージェントからも「この方は本気で転職する気だな」と見られます。先に述べた通り転職エージェントは転職させるのが仕事なので、そういった事前の準備をしている方ほどしっかりと向き合ってくれるでしょう。