キックボクシング王者が路上生活者に転落…
借金50万円が3か月で1000万円に

回復プログラムを終え、社会復帰してまだ数ヵ月という中竹一刀さんは、元プロキックボクサー。現役時代は所属団体でチャンピオンに輝くほどの選手であった中竹さんも、競馬と競艇で依存症を発症した。

早大卒エリートに元受刑者。元キックボクシング王者は借金50万円を3か月で1000万円に膨らませて路上生活者にまで転落…回復状態を維持するギャンブル依存症専門回復施設のスタッフたち_3
元プロキックボクシング王者、中竹一刀さん

元々パチンコ・パチスロが好きで、その頃から借金して打つほどであったが、金額はまだ50万円程度だったという。だが、オンライン競馬にハマると、僅か3か月で借金が1000万円に膨れ上がった。しかし、それでも自分は正常だと思い込み続けて、ギャンブルをやめられない。

早大卒エリートに元受刑者。元キックボクシング王者は借金50万円を3か月で1000万円に膨らませて路上生活者にまで転落…回復状態を維持するギャンブル依存症専門回復施設のスタッフたち_4

やがて競馬だけでなく、競艇にも手を出すようになり、借金の額は3倍にも4倍にも膨れ上がった。そこまで悪化し、ようやく自分が病気だと認められるようになると、「自分が生きるためには最優先でギャンブルをやめなくてはならない」という考えが芽生え、助けを求めてグレイス・ロードへの入所を決めた。

入所する前は人生でどん底の生活を送っており、住むところすらなかったため、施設の部屋が知らない他人との相部屋だからといって、嫌な気持ちは全くなく、ただただ屋根がある場所で眠れることが嬉しかったという。

入所当時は、同じ依存症者でありながら既に回復して自立していた先輩スタッフの姿に勇気づけられた。

「そのスタッフは、依存症から回復して、仕事して給料をもらっていて、結婚して車も持っていました。それを見て『自分もこんな風になれるかもしれない』と希望を感じました。入所前は、もう絶対にそんな人生は送れないって思い込んでいたので」(中竹さん)

回復プログラムに取り組んでいくなかで、回復を実感する瞬間も度々あった。

「ボランティアで募金活動をしていた時、1人の小学生が目の前を通り過ぎて行ったのですが、すぐに引き返してきて自分の財布からお金を出して募金してくれたんです。自分は、今までそんなことしようと考えたこともなかったので、すごいなと感動しました。同時にその光景に感動している自分に回復を実感できました」(中竹さん)

兵庫県出身で、元々は山梨に縁もゆかりもなかった中竹さんだが、現在では山梨でのボランティア活動に強い意義を感じているという。

「今、自分が安心できる場所は山梨であり、この施設です。施設が続けていけるのは、山梨の人たちに認められて、山梨に居させてもらえているからなので、何か少しでも山梨に恩返しができればという気持ちがあります」(中竹さん)