奉仕活動がギャンブル依存症者の治療に有効
施設では、入所者は2〜6人の相部屋で寝泊まりする。依存症によってコミュニケーションに障害を抱える人が多いため、24時間他人と過ごして人との関係作りの感覚を取り戻すことが目的だ。
ほかにも、依存症の回復プログラムである12ステップはもちろん、外部から公認心理師を招いてソーシャルスキルトレーニングも行っている。アンガーマネジメント、アサーティブ(自己主張)、マインドフルネスなど、多岐にわたるメニューで感情をコントロールする術を入所者に習得させている。
また、週に一度はスポーツプログラムを実施。入所前は食事も摂らずにギャンブル場に入り浸っていた人が多く、身体が弱っているため、肉体面の健康を取り戻すためにスポーツが役立つのだ。
年間約100回行っているボランティア活動も治療に有効となる。具体的な活動内容はゴミ拾いや駅前の清掃、募金活動など。一見治療に関連がないと思えるが、実は重要な意味がある。
「ギャンブル依存症者は『お金にならないことなんかバカバカしい』という考えで生きてきた人達です。そんな人に、お金にならない奉仕活動をさせることは、意識に大きな変化を与えます。活動を通して地域の人達からお礼のお言葉をかけてもらえることもありますが、そういった経験から自分が社会の役に立つという自己肯定感が生まれます。自己肯定感を育てていくことが回復につながるのです」
過疎化と高齢化が進む山梨では、若い入所者を多く抱えるグレイス・ロードは地域から重宝されているという。これまで続けてきたボランティア活動の実績によって、地域からの信頼は厚い。世間一般では忌避されがちなイメージのある依存症者だが、地域のお祭りの手伝いを依頼されたり、運動会への参加を促されたりと、良好な関係を築いている。
「山梨における人口の減少や高齢化は深刻な問題ですから、地域に対して多少の貢献はできているのではないかと自負しています。とはいえ、依存症者達だから、ちょっと脛に傷があるかもしれないです。でも、傷物であっても、病気さえ治療してよくなれば有能な役に立つ人材ばかりです」