なぜ尿管結石はできるのか?
「医者から見て、この世でもっとも痛い病気はなんだと思いますか?」
このように聞かれることがある。「医者から見て」といわれても、医者は病気の“治療の専門家”ではあるが、“病気の経験”においては素人なことが多い(夜勤も多く、喫煙者も別に少ないわけではない職業なので、生活習慣病を複数抱えている不養生タイプの医者も珍しくはないが……)。
医者だからといってさまざまな病気を経験しているわけではないので、少し答えを出すのに時間がかかるのだが、みなさんの痛がり方を見ていると“痛い病気”の二大巨頭は尿管結石と痛風ではないだろうかと思う。
特に尿管結石は、未治療であれば再発率が50% というデータも存在する怖い病気だ。
夜中の救急外来にて
夜の患者さんもいち段落した夜中の救急外来で、ポツりと救急隊からの電話が入る。
「44歳男性、腰背部痛です、受け入れ可能でしょうか?」
救急車の受け入れを許可して10分後、背中を「く」の字に丸めて、大量の冷汗をかきながら救急車から1人の中年男性が運ばれてきた。
これは……と思い背中に超音波の機械を当て、腎臓の様子を確認すると、腎臓の中に水が溜まってふくれている。
この状態を“水腎症”と呼ぶ。尿管結石のときに起きる現象だ。腎臓の下の管に結石がつまっているので、水の流れがせきとめられて腎臓の内部に溜まっているのだ。
会話もままならない患者のため、看護師にお尻の穴から鎮痛剤の挿入を指示した。こんな光景は救急外来では日常茶飯事である。尿管結石では大の大人がベッドの上でのたうち回り、会話もままならない状態になることがある。