お仕事エンタメと社会派ラブコメ、それぞれの過去作

最後に作品のジャンルについて考えてみたい。

芳根京子の『それってパクリじゃないですか?』は、知的財産をめぐり巻き起こるさまざまな問題に立ち向かっていき、あくどいパクリから会社を守るお仕事エンタメドラマ。

波瑠主演の『わたしのお嫁くん』は、仕事は完璧ながらズボラ女子の一面を持つ主人公が、会社の後輩の家事力最強男子を“嫁”に迎えるという社会派ラブコメディー。

『それってパクリじゃないですか?』は小説原作もの、『わたしのお嫁くん』は漫画原作もののため、いずれももともとのストーリーの面白さは折り紙付き。

けれど原作ものなら確実にヒットするといった保証は当然なく、やはりドラマ自体のクオリティがヒットの分水嶺になるだろう。

ジャンルで分析すると、『それってパクリじゃないですか?』はニッチな職業にフィーチャーする作品のため、一例だが2016年の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)や、昨年の『競争の番人』(フジテレビ系)に通底する部分がありそうだ。

『地味にスゴイ!』はスマッシュヒットとなったが、『競争の番人』は視聴率も評判もいまひとつだったため、地味なお仕事をエンタメ的におもしろく昇華するのはなかなか難しいのかもしれない。

『わたしのお嫁くん』のほうは、社会派ラブコメディーと聞いて思い出されるのはやはり、2016年にブームを巻き起こした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)。また、2020年にヒットした『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)も同ジャンルと言える。

『逃げ恥』のように現代の社会問題をコミカルに描き、さらに共感を得られる胸キュンシーンを投入できれば、『わたしのお嫁くん』も大化けするかもしれないが、言うは易く行うは難しだろう。

水曜22時に波瑠 VS 芳根京子のガチンコ対決が…“朝ドラヒロイン”が主演するドラマは女優人気やストーリー以外にも“枠”のブランド力が勝敗を左右する?_4
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――ドラマ枠としてのブランド力、主演女優の実績や勢い、ジャンルの過去のヒット作など、分析するファクターは数多くあるが、個人的には枠の強さと女優として勢いのある芳根京子の『それってパクリじゃないですか?』が優勢と見ている。

だが、けっきょくのところ勝敗を左右するのはシンプルに「おもしろいかどうか?」。ひとまず両作とも第1話を期待して観てみたい。

文/堺屋大地