行政文書の「虚」と「真」

「高市氏は“官邸のパペット”だとバレるのを恐れたのでは」元経産官僚・古賀茂明氏が語る「ねつ造発言」と「行政文書の虚と真」_3
立憲民主党の小西洋之参院議員が安倍政権当時の総務省作成として公表した、放送法の「政治的公平」に関する内部文書
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――そもそも、行政文書はどこまで正確なのでしょうか?

経産官僚だった私の経験から言えば、すべての行政文書が必ずしも正確というわけではありません。大臣や局長に報告するとき、役所や当の官僚にとって都合の悪いことは書きませんから。

行政文書管理のガイドラインが改正され、課室長級の文書管理者による確認などが徹底された2017年以降は正確になったという声もありますが、それもウソ。役所にとって都合の悪い文書は担当課長が承認せず、行政文書に登録しないこともしばしばです。

作成したり、保存したりすることが微妙な内容の文書は役所内では「ノンペーパー」と呼ばれ、個人のメモ扱いとされるんです。また、行政文書に登録するにしても読まれたくない部分を書き直したり、わざと落としたりすることもあります。だから、文書にある高市さんに関する記述も不正確な部分があってもおかしくありません。

――では、「小西文書は不正確」という高市大臣の主張は正しい?

私も官僚時代、通産大臣室で働いたことがあるからわかるんですが、例えば外部からの電話はまず大臣室の秘書官などが対応し、相手とつながっていることを確認してから『誰々さんから電話です』と、ボスである大臣につなぐ。

だから、官邸でも高市さんからの電話はまず今井直哉筆頭秘書官らが対応しているはずです。つまり、高市さんはまずは首相でなく、今井秘書官らと話しているんです。

その時、今井秘書官が何らかの理由で首相につなぎたくないと考えたとしたら、安倍さんの意向を高市大臣に説明しただけで電話を切ってしまったのかもしれない。まして、当時は通常国会の審議中で、安倍総理も高市総務大臣も分刻みのスケジュールに追われている時です。高市さんも長電話できず、今井秘書官の説明を聞いただけで納得して電話を終えた可能性は小さくない。

その意味では、高市さんの言うとおり「放送法の解釈変更をめぐって、安倍総理と電話でやりとりしたことはない」というのは、あるいは本当なのかもしれません。その一方で、『首相と総務大臣の電話会談の結果』というペーパーが2種類も行政文書として残っている以上、本当に電話でやりとりした可能性も否定できません。