ヤングケアラーの盲点

中学や高校で家出をしたところで、真っ当な仕事をして生活をすることは難しい。また、彼らはそれまでの生い立ちの中で、愛着障害のようになって誰彼問わず肉体関係を求めたり、常識や認知が様々な形でゆがんでいたり、同じような境遇の者としかつるめなくなったりしていることがある。

こうした人たちが支援者もいない状態で社会に出て、未熟なまま家庭を持ったらどうなるのか。そのしわ寄せが、その子供にくることは想像に難くない。

現在、児童相談所や児童養護施設で行われている親子の再統合の取り組みや、母子生活支援施設で行われている親支援は、そのような親に生活や子育ての一般的なモデルを教えることだ。数か月、長ければ数年にわたってそれを身につけさせ、大丈夫だと判断した時点で自立させる。

冒頭の事件の容疑者の芽衣もまた似たような経緯をたどっている。ヤングケアラーの生活から抜け出したものの、水商売をしながら生んだ空来ちゃんをネグレクトし、児童相談所のプログラムを受けた。

事件の詳細は、今後の取り調べや裁判を見守っていく必要があるが、ここで考えなければならないのは、ヤングケアラーが抱える問題は、必ずしも「病弱な家族をケアし、学校へ行けなくなる」というものだけではないということだ。

詳しくは拙著を読んでいただきたいが、ヤングケアラーが直面している家族の問題は非常に複雑であり、中には今回見たようなダークな一面もある。そこで子供たちが奪われるものは非常に大きい。

私たちはヤングケアラーが抱えている問題を、より広く、深く受け取り、対策を講じていく必要があるだろう。

取材・文/石井光太