非公開の場で解決されてきた過去の裁判

エンタメ化(?)するセレブの裁判。ジョニー・デップ勝訴の鍵は、弁護団の巧みな情報操作にあった_01
裁判に勝訴したジョニー・デップ 代表撮影/ロイター/アフロ

名誉毀損裁判で元夫ジョニー・デップに敗訴したものの、上訴したアンバー・ハード。素人目に見ても「この人で大丈夫?」と思われたイレーン・ブレデホフト弁護士を解任し、強力な助っ人を2人加えた新弁護チームでデップとの第2ラウンドに挑む予定だ。

まず、状況を説明しておこう。
2016年の離婚騒動でDVをめぐってのトラブルが表面化したものの、デップとハードが共同声明を出して、離婚成立。ところが2年後、ハードが「ワシントン・ポスト」紙にDVサバイバーとしての記事を執筆。元夫への言及はなかったものの、デップのことを指していたのは明らかで、記事に激怒したデップが元妻を名誉毀損で告訴するに至ったのだ。ハード側も受けてたつとばかりに逆告訴し、泥沼状態となっていった。

そもそも、アメリカでの裁判は陪審員制が普通で、原告側と被告側が同意した12人の陪審員が審理に出席。そこで提示された証拠や証言などを元に、陪審員同士で話し合い、有罪か無罪かを決定する。日本でも2009年に制度が復活していて、有罪か無罪かだけでなく、有罪の場合は裁判官と一緒に刑罰を決めることになっている。陪審員の偏見によって無実の人間が投獄される場合もあるため、市民の常識と良心が必要とされる制度なのだ。

ただし、有名人が絡むアメリカの裁判の場合、双方の弁護士同士の話し合いによって解決するのが一般的。ほとんどのセレブが有名な凄腕弁護士を雇っていて、訴えられたらすぐに相手の弁護士と話し合って、落とし所を探る。多忙なセレブにとって、時は金なり。裁判に時間をかけるより、和解金を支払ってさっさとケリをつける方が簡単だもんね、お金持ってるし、というわけだ。

また、裁判に持ち込まれたとしても、陪審員ではなく裁判官に審判を委ねるベンチ・トライアルを選択するセレブが多い。最近では女性ファンからセクハラで訴えられた人気シェフ、マリオ・バタリがこちらを選び、裁判所に出廷することなく勝訴している。

さらにブラッド・ピットVSアンジェリーナ・ジョリーの離婚のように、プライベート裁判官に審判を仰ぐ場合もある。これは家族法訴訟の対象者に適用される裁判方法で、秘密保守度が高いのはもちろんだが、費用がかかるのは言うまでもない。有名人の場合は事件に関わる証言でプライベートをさらされるのをよしとしない傾向が強く、陪審員裁判を避けがち。意地悪な見方をすれば、表沙汰にされたくない秘密が多いとも言える。

そんな中、セレブにしてはめずらしく陪審員裁判を選択したデップVSハードだが、その理由は、デップ側が強く希望したから。愛する子供たちのためにも不名誉な訴えは虚偽だと公の場で証明したかったという。受けて立つハード側も一歩も引かない構えで、裁判の様子は世界中に配信され、大きな話題を呼んだ。