大手飲料メーカーであるキリンホールディングスが開発中だという新時代の食器『エレキソルト』。
現状は“お椀型”と“スプーン型”の2種類。そのお椀やスプーンから電気を流し、飲食物中のイオンの動きをコントロールさせることで、塩分控えめの食品を食べてもしっかりと塩気を感じることができるという代物だ。いったいどういった仕組み、そして実際の機能はどうなのだろうか。
イオンをコントロールして塩気を感じる? すごすぎる仕組み
『エレキソルト』は明治大学の宮下芳明研究室とキリンが共同開発したもの。その開発に携わるヘルスサイエンス事業部・新規事業グループの佐藤愛さんは、『エレキソルト』の仕組みについてこう解説する。
「『エレキソルト』は現時点(2023年2月)ではまだ試作段階ですが、“電気味覚”と呼ばれる技術によって食事の味をコントロールしています。食べ物自体に電気を流して、塩気やうま味の元となる“イオンの動き”を制御し、舌に接する面に集中させることで擬似的に味を操作する仕組みです」(佐藤さん、以下同)
食べ物自体に電気を流す仕組みとはいえ、口に入れるものに電気を流すはやや物騒な気がするが、危険性や使用時に違和感はないのだろうか……。
「食べ物に電気を流すと聞くと身構えるかもしれませんが、電流は人間が感じられるか否かという微弱さなのでご安心ください(笑)」
キリンが『エレキソルト』の試作品を使って40歳~65歳の男女31名を対象に試食アンケートをおこなったところ、減塩食を食べたときに“塩味が増強されて感じる”と回答した人が29名にも上ったそうだ。
「塩味だけでなく、うま味、酸味もこの技術で味の濃淡がコントロールできます。『エレキソルト』という名前ですが、しょっぱさだけではなく、うま味やすっぱさなども濃く感じる効果があるということです。ただ、操作できるイオン性成分がない砂糖が主原料であるスイーツなどでは、ほとんど効果は感じられません」