他者を愛するために、まず自分を愛する。“エゴイスト”の意味は、悪いことばかりじゃない(松永)

この愛情はエゴなのか、欺瞞なのか。 映画『エゴイスト』松永大司監督×宮沢氷魚さんインタビュー_16
この愛情はエゴなのか、欺瞞なのか。 映画『エゴイスト』松永大司監督×宮沢氷魚さんインタビュー_17

──浩輔さん自身、モデルである高山さんがそうですが、思春期の手前でお母さまを亡くしてしまい、母の愛が足りないという欠落を抱えていますよね。

松永「シナリオを修正する段階のときに、生前の高山さんと面識のあったドリアンから、高山さんが友人限定でmixiに書いていた日記を読ませてもらいました。そこに書いてあった内容が、シナリオを作る上でとても大きかったです。高山さん自身がどういう方だったのかを知ることが、浩輔像を深くすることに必要なんじゃないかと思っていました」

宮沢「よくインタビューで、原作では龍太のことがあまり詳しく書かれていないけど、役作りをどうしたんですかと聞かれることが多いんですけど、 僕としては十分すぎるぐらいで、浩輔さんについて多くが語られているからこそ、そういう浩輔さんのことが大好きだった龍太っていう人物が僕の中ではしっかり見えていた。

直接、龍太がこうだったっていう説明がなくても、龍太といることによって、浩輔がこういう風に変わっていった、こういう風に感じたという説明が細かく書かれているから、こんな感情を引き出した龍太はどんな人だったんだろうと連想ができたんです。あとは、撮影の時、素直にその瞬間どう感じたかにリンクさせただけでした」

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この愛情はエゴなのか、欺瞞なのか。 映画『エゴイスト』松永大司監督×宮沢氷魚さんインタビュー_20

松永「龍太ってすごくシンプルな役だと思うんです。いろいろ深読みすると、勘ぐるような感じもあるじゃないですか。龍太って本当は悪いやつなんじゃないか、裏があるんじゃないかって思う人もいると思うんですが、最終的には、『普通にめちゃくちゃいい人じゃん』っていう。

そういうピュアで真面目な面は、氷魚自身が持っているものだと思います。僕はその人が本来持っているものを役に合わせて引き出して演出してきます。それこそ浩輔役に亮平を選んだ理由っていうのも、浩輔が持つ要素を亮平が持っていると思ったからです」

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──最後に、高山さんは、自身を投影した浩輔が龍太にした愛情のかけ方がエゴイストだったと書いていますが、監督自身は、どう感じられましたか?

松永「ご本人がエゴイストって言っているんだったらエゴイストでいいと思います。ただ、エゴイストって言葉の意味が、悪い意味だけでもないなと思いました。他者を愛するために、まず自分を大事にするっていうことは、心の余裕も含めて、一周回ってくるものだなと思うから。

自分のことを嫌いな人って、人に優しくできないじゃないかと思います。自分のことを大切にして、人のことも大切にして、結局、人がまた自分のことを大切にしてくれる。そういう循環の始まりが、エゴイストであることから始まるのなら、自分を愛することから始まっていい。そこは否定したくないですね」

エゴイスト

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4歳のときに病気で母を亡くした斎藤浩輔は、母の死を侮辱した同級生たちに消化できない負の感情を抱いたまま成長し、大学進学を機に上京。出版社に就職し、ゲイセクシャルであることを理解してくれる友人にも恵まれる中、病身の母を抱える中村龍太と出会い、恋に落ちる。彼を愛し、サポートを惜しまぬようになるが、龍太は浩輔との関係を母親に言えず、友人として龍太の母とも関係性を深めていくが、ある時、予期せぬことが起きる。
2020年に亡くなった高山真の自伝的な色合いが強い同名小説の映画化。

原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊)
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子

出演:鈴木亮平 宮沢氷魚
中村優子 和田庵 ドリアン・ロロブリジーダ
/ 柄本明 / 阿川佐和子

●全国にてロードショー公開中。

配給:東京テアトル
制作:ROBOT

R15+
120分

©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

映画『エゴイスト』公式サイト

撮影/藤澤由加

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