「市の人口を増やしたいと思ったことはない」

なぜ明石市では「子育て政策を充実」させたら「建設ラッシュ」が起きたのか? 泉房穂市長が「明石でできることは全国でもできる」と断言する理由_5

――明石市は転入増で成功していますが、日本全体では自治体が人口の奪い合いをしているだけで、出生率があがったわけではないという批判があります。

いくら明石市が努力したところで、日本の出生率は1.3ですから人口が増えることはありません。出生率が1.6と高めの明石市もいずれは平準化され、人口減となることでしょう。だから、私は市の人口を増やしたいと思ったことはないし、人口をよそから取りたいと思ったこともありません。

ただ、明石市民をハッピーにしたい。たとえば、2人目、3人目の子どもがほしいけど、収入面で不安だという市民がいるなら、市が支援することで安心して産めるようにしてあげたい。それだけです。

――子育て政策で難しいのは、子どもたちが進学や就職で街を出て行って戻ってこないことだと思いますが、明石市ではどうですか?

明石市でも高卒後の18~25歳人口の転出が激増しています。小さな自治体にとって大切なのはその後です。明石で育った子どもが結婚して子どもを作った時に、「故郷の明石は保育料も医療費も完全無料だ」と戻ってきてくれるかどうか。幸い、明石市は30歳前後の人たちが3~4人の家族となって戻ってきてくれているので人口増になっている。事実、昨年の「戻りたい街ランキング」でも明石市は日本一でした。

――教育や子育てにお金を回すためにはどうしたらいいですか。

簡単です。政治家が決断したら、一瞬でできます。防衛費は倍増できるのに、子ども予算をやらないのは、政治家が「そのテーマは儲からない」と利権の構図で考えているとしか思えません。

――海外の主権者教育を視察した際、ヨーロッパの子どもたちが学校給食の改善を求める署名活動をしたり、LGBTQ+のトイレがほしいと交渉したりする姿に驚きました。小学生が社会をどんどん変えていっているんです。日本では、大人が子どもに権限を渡しませんし、子どもも社会を変えられるとは思っていない。どうすればいいと思いますか?

若い人がどんどん立候補することです。今は残念ながら25歳にならないと立候補できませんけど、20歳、18歳で立候補してもいいと私は思っています。それが無理なら、近くにいる人を応援すればいい。そうすることで、投票を通じて自分たちが社会を変えたと実感することが大切です。

手前味噌になりますが、多くの明石市民が私のことを「私の市長」と言ってくれる。これは多くの有権者が「投票によって自分たちが明石を変えた」と思えているからでしょう。