生活態度次第で移送される刑務所が変わる

山上徹也被告を待つ「監視カメラ個室」での“超厳戒”拘置所生活。「運動は平日30分」「入浴は週2回」「読書、手紙、差し入れもOK」_4
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選択刑において、死刑が含まれる罪を犯した被告人に、裁判所が死刑判決を言い渡すケースは1パーセントにも満たないというのが現実である。山上被告の場合も死刑にはならないと思うが、死刑が確定した場合のことを記しておく。

死刑確定囚という身分になり、被告人に比べるとあらゆる行為に制限が加わり、視察も厳しくなる。ただし、心情の安定を図るとの理由でテレビ鑑賞、DVDによる映画鑑賞など単独で視聴させる機会を定期的に設けている。宗教家の支援を希望すれば個別の面接を受けることができるが、基本的にはいつ来るとも知れない死刑執行の日を待つことになる。

死刑は絞首刑、執行言渡しは、死刑場に隣接した教誨室に連行して行われる。正に執行直前の言い渡しである。死刑囚の親族には執行後に知らされる。その際、遺体と遺品の引き取りについての希望を聴取する。

2022年6月、刑法が改正されて、懲役刑(刑務作業が義務)と禁錮刑(刑務作業が義務ではない)がなくなり拘禁刑になった。現在は移行の準備期間で従来のままだが、山上被告の刑が確定するときには、拘禁刑になっている。拘禁刑の内容は改善更生に必要な教育、職業訓練、更生資金等を得るための刑務作業就労といったことになる。

山上被告の場合、おそらく有期刑でも20年以上の長期になると思われるので、長期刑の受刑者を収容する刑務所に送られるであろう。ここでは再犯者や犯罪組織構成員など犯罪傾向が進んでいるB級という判定と、非行前歴や犯罪前歴のない者など犯罪傾向が進んでいないA級という判定がある。 

山上被告が分類審査によってBと判定されれば、大阪刑務所、岐阜刑務所、熊本刑務所といったB級収容施設に送られる。Aと判定されれば、岡山刑務所、千葉刑務所、大分刑務所といったA級収容施設に送られる。

AとBとでは大違いで、仮釈放の恩恵を受けられるか否かのみならず、受けられる時期も異なる。A級の無期は30年前後、B級の無期は、ほぼ仮釈放の見込みがない。あっても50年という例があった。現実を見れば最期は獄死という事実上の終身刑になっている。

最期に、老婆心ながら一言申し上げる。拘置所内でも規則に従い、好感を持たれる言葉遣いをして、一般的なモラルに反しない生活態度を維持しておけばAの判定をもらえる。将来の社会復帰のためにも我慢が必要ということだ。

文/坂本敏夫  写真/共同通信社 PIXTA