NPO法人で地域おこしの仕事をした際に中村ブレイスを知り、見学イベントに参加。義肢装具士という仕事に感銘を受け、資格を取ることを決意。34歳から3年間、兵庫県の専門学校に通って資格を取得した後、中村ブレイスに入社した。

病院に出向いて医師の処方に基づき、病態に合わせて患者をサポートするのに相応しい義肢装具を製作からメンテナンスまで一人で行う義肢装具士は、学校で医学、工学、美術などの知識を身に付ける。

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中村ブレイスの作業室には、義肢装具製作段階の石膏型が並んでいた

「立てなかった人が装具を着けて立って歩く姿を見た時など、格別の喜びがあります」(後藤さん)

大森町に移住してよかった点を聞いてみた。
「ここの風景には、都会にはなくなってしまったファンタジーがあるんです。娘(夏穂ちゃん・8歳)にもすれちがいざまに声を掛けてくれるなど、みんな優しいですし、外から移住してくる人も多い。パリで移民街に住み、全く違う宗教や価値観の人達と近くで暮らした経験のせいか、自分と違う考えも尊重するようになった気がします。そんな自分にとってはここは開放的で住みやすいです」

この地で義肢装具士として働き、暮らすことに今は生き甲斐を感じるという。
「若い頃は自分のやりたいことばかりを追求していました。そんな時に肩を傷め、いろいろな人に助けてもらった。これからは逆境に立たされた人を支えたいと思います。
例えば足を失い、義足になった患者さん。社会復帰をし、船に乗れるようになり『このイカ持ってけや』と、くれたりするほど元気になった姿を見られるのは何よりの喜びです。患者さんが葛藤し、闘って、元気になると、ともに葛藤していたご家族も元気になり、私も幸せになる。そんな好循環にご一緒できる幸せを感じています」

「田舎で暮らしたい」「なぜ? やめなさい」…それぞれのパートナーからは意見も。ヨーロッパ生活を経て石見に移住した二人の青年の幸福とは_3
義肢装具の石膏型を完成させる作業中