――お仕事をされていると伺いましたが、どんな風に仕事と執筆活動を両立されているのでしょうか?
私の場合、定時上がりの仕事なので、仕事を終えて帰宅して、食事と入浴を済ませたら、そこで会社員としての一日は終了。そこから頭を切り替えて、執筆作業に取りかかるというルーティンを作っています。
公募に挑戦し始めてからは、量を書く力をつけたくて、「一日に何千字書く」というノルマを自分に課していました。そこから作品が仕上がるタイミングを逆算して、それに合わせて応募先を決めていきましたね。
書いては出す、書いては出すというラリースタイルは正直かなりキツくて、Twitterで同じように公募に挑戦している人を探したり、その人が「今日は何千字書きました」って呟いているのを見て、気持ちを奮い立たせたり……。
一度書くのをやめるともう書けなくなってしまう気がしましたし、仮にひとつの公募に落選しても、書き続けていれば「次の応募先がある」ことをよりどころに、落ち込みすぎず切り換えられますから。自分のモチベーションを維持するために執筆を続けていたと言えるかもしれません。
ただ、そんなラリースタイルでやっていたせいで、『双蛇に嫁す』は書き上げてからの推敲期間が10日ほどしか取れず……。これは自分が最初の原稿を仕上げるのに手こずったせいで予定が後ろ倒しになってしまったという反省点なんですが、当時は自分で決めたスケジュール通りに応募して次へ行きたかったので、とにかく予定通りに応募することを最優先にしてしまいました。
――書く力をつけるために取り組んだことはありますか?
執筆を始めた当初は村上春樹や夏目漱石といった、自分の好きな作家の小説をひたすら書き写していました。
それは単純にその物語が好きで写していた面もあるんですが、写すことで文章のリズム感を掴めるかなと思ったので。今でも、好きだなと思った文章の書き写しは続けています。それから、リズム感を確かめるために自分が書いた文章を音読する。これは「音読した時に読みやすい文章が、黙読でも読みやすい」と聞いたことがあるからです。
あとは、自分の好きな漫画を勝手にノベライズする。もちろん、どこに発表するわけでもないのですが……二次創作ではなく、漫画の筋を忠実に追って文章化することで、絵で表現されているものを自分の言葉で表現する訓練をしました。
こうやってお話ししていると、自分は「書く」ことが好きで、書く行為そのものに対していろいろ取り組んできたなと実感します。でも、執筆のためにパソコンの前に座るまでには、なぜか時間がかかるんですよね……。
〈ノベル大賞 カズレーザー賞受賞〉新星・氏家仮名子がデビュー作で目指した、少女小説としてのファンタジーとは
集英社オレンジ文庫が主催するノベル大賞で、2022年ゲスト審査員賞である〈カズレーザー賞〉に選ばれた氏家仮名子さん。とにかく書くことが好きで、がむしゃらに公募を続けてきた末にデビューを勝ち取った氏家さんが描く、少女小説の未来とは。
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少女小説は「試される少女」の物語
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