若い男女がセックスをする際、避妊の問題と性感染症の問題は避けて通れません。また、同性同士のセックスであっても、性感染症の問題は避けられません。
この2つの問題に対応するために男性ができることは何かというと、当然ながらセックスの際、必ずコンドームを装着することです。子どもを作る予定のないすべての男性は、「コンドームがなければセックスをしない」と言えるようになりたいものです。
大事な注意点としては、コンドームは自分で買うこと。ラブホテルに置いてあるものや、他人からもらったものは、破損している可能性があり、安心できるものではない場合があります。また、コンドームにはいろいろなサイズや形があります。自分で買って試しながら、自分の陰茎や好みに合ったコンドームを選ぶようにしましょう。
セックスする場所が自宅以外の場合、コンドームを携帯する必要があります。その場合は、コンドームは熱に弱いため、直射日光を避け、温度が高くならない環境を保つようにしましょう。保管の際には、コンドームの形状に影響のない、ハードケースに入れて携帯するのが理想です。財布に入れて携帯している人が多くいますが、これはコンドームが傷みやすく、お勧めできません。
相手の女性が「ピルを飲んでいるから」とか「今日は安全な時期だから」と言ってきた時でも、必ずコンドームは使ってください。その言葉が本当かどうか分からないからです。本人が勘違いしているかもしれませんし、ピルを飲み忘れていることもあるでしょう。さらに、だまされている可能性もゼロではありません。
また、最初はコンドームなしで挿入して、射精しそうになってから中断してコンドームをつける、というケースもよく聞きますが、それは、避妊や性感染症予防の意味からいえば、大変危険なことです。
【画像あり】大人も意外と間違ってる。学校では教えてくれないコンドームの正しい付け方
近年、梅毒患者が国内で過去最多になるなど、性感染症対策としてもコンドームは必須のアイテムとなっている。コンドームの重要性と意外と知らない正しい付け方を解説する。『射精道』(光文社)から一部抜粋・再構成してお届けする。
大人も知っておきたい性のあれこれ
なぜコンドームが必要なのか?
正しく使えば、避妊効果は98%に…
射精が近づいてくると、陰茎からは「カウパー腺液」というものが分泌されます。
カウパー腺液とは、精子を守る役割を持つ分泌液です。精子は尿道から射出されますが、普段は尿が通る場所であり、尿は酸性であることが多いことから、尿道は酸性に傾いています。ところが、精子は酸に弱い性質があるため、先にカウパー腺液を分泌して尿道を弱アルカリ性に整え、精子を守る準備をしているのです。
理論的にはカウパー腺液の中に精子は存在しませんが、「カウパー腺液中に精子は存在していた」という報告も一部存在します。いずれにしても、カウパー腺液が出てくるということは、射精が近づいている証拠であるので、カウパー腺液中に精子が出てくることもあるだろうと考えています。やはり、リスクをなくすために、途中からではなく、挿入前には必ずコンドームを装着するようにしてください。
三十数年前のおバカな高校生の私でも、コンドームは「相手を妊娠させないために必ずつけなくてはならない」ということ、「おしっこを出す時にものすごく痛いという淋病がうつるのを防げる」こと、そして「コンドームの使い方はけっこう難しいらしい」ということを知っていました。
セックスがしたくて仕方がない男子高校生にとっては、相手を守るというよりも、自分を守るために必要な生活の術として、コンドームの使用法は必修事項という認識だったわけです。
では、コンドームが妊娠を防ぐ効果は、実際にはどれくらいのものなのかというと、おおよそ「85%の避妊効果」といわれています。
セックスをしていても使わない時間があったり、使い方を間違えていたり、コンドームが破けてしまったりすることがあるため、この数値にとどまっていますが、きちんと正しい方法で使えば、コンドームが妊娠を防ぐ効果は98%といわれています。ほぼ100%ということです(特に、日本のコンドームの品質は素晴らしいものがあります)。
「梅毒」の国内感染者数は過去最多
性感染症、たとえばクラミジアや淋病といった病気を防ぐ効果も非常に高く、98%ほどといわれています。
ヘルペスや感染性の性器のイボ(尖圭コンジローマ。ヒトパピローマウイルス〔HPV〕により起こる)など、皮膚から皮膚にうつる感染症については、もう少し効果は落ちます。コンドームがヘルペス感染のリスクを減らせるのは、男性から女性の場合は96%、女性から男性の場合は65%とされます。(参考「Seventeen Magazine」ウェブサイト)
性感染症は多くの場合、患者当人も周囲の関係者も、恥ずかしさや決まりの悪さから、感染したことを周りに言うことはありません。そのため、自分とは関係のない遠い世界の病気のように感じている人が多いと思います。
しかし、厚生労働省の調査によると、実際には2019年に、クラミジア2万7221人、性器ヘルペス9413人、尖圭コンジローマ6263人、淋菌感染症8205人、梅毒6642人と、合計5万7744人の性感染症患者がいることが分かっています。
中でも深刻なのが、梅毒の広がりです。10年前と比べると、患者数は約10倍に増えており、2021年12月現在で、国内感染者数が過去最多となっています。全国的に増加しており、特に東京や大阪、その周辺部で増加が加速しています。
実際に、性感染症に罹患した患者さんの治療にあたることがありますが、「まさか自分がこんなことになるとは思っていなかった」「心当たりがまったくないんです」と口にする方が珍しくありません。
装着はもちろん、外す時にも注意が必要
不特定多数の相手とセックスをすることで、性感染症に感染するリスクが高くなるのは事実ですが、ごく普通の性生活をしていても、一度のセックスで運悪く感染してしまうことはあり得ることです。意外と身近に存在するものであることをよく理解した上で、コンドームなしのセックスは基本的に避けることを心掛けてほしいと思います。
次に、コンドームを使うにあたっての注意点をまとめておきましょう。
・コンドームを破損しないために爪を短く切っておく
・挿入する前に必ずつける。行為の途中で装着するのでは意味なし
・女性の月経周期やピルの使用に関係なく、コンドームはつける
コンドームのつけ方については、最後にイラストで解説します。
挿入した後も、コンドームがまくれ上がっていないか、時々確認をしましょう。装着の仕方が悪いと、コンドームがまくれ上がるようにしてペニスの先端に移動していき、外れてしまうことがあるので要注意です。
また、セックス後にコンドームを外す時にも注意が必要です。ペニスは、射精をすると速やかに勃起状態がゆるむため、射精後は直ちにペニスの根元でコンドームを指で押さえながら、ペニスを抜きます。
コンドームが破れて精液が漏れてきていないかを確認し、精液が漏れないように口を縛ってごみ箱に捨てます。使用済みコンドームは、生ごみの扱いになります。くれぐれもトイレに流さないようにしてください。
性欲旺盛な二人なら、2回、3回と続けてセックスを行うこともあるでしょう。その場合は、手や陰部をきちんと洗ってから、新しいコンドームを装着して2回戦に突入した方がよいでしょう。付着した精液が腟に混入することを避けるための用心です。
意外と間違いの多い…正しいコンドームのつけ方をチェック(すべての画像を見るをクリック)

『射精道』(光文社)
今井伸

2022年9月14日
968円(税込)
新書 288ページ
978-4-334-04626-2
射精は
一日にしてならず
その正しい扱い方、練習の方法と重要性……
思春期から中高年期まで知っておくべき知識と心構え