退校者の声 #1

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#1 望月衣塑子
#2 大木毅
#3 現役教官
#4 石破茂
#5 石原俊
【元防大生の声】
#1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて…
#3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」
【防大生たちの叫び】
#1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄”
#2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件…

「1学年はゴミ、2学年は奴隷、3学年は人間、4学年は神」

防衛大学校では、学年ごとに人格形成の標語が定められている。
1学年は「模倣実践」、2学年は「切磋琢磨」、3学年は「自主自律」、4学年は「率先垂範」。

自主自立を目指すなら、割りばしぐらい自分で用意すればよさそうなものだが(前編参照)、学生たちの間で語り継がれているという「裏の標語」には、まさに「誤った上下関係」が象徴されている――それが、1学年はゴミ(石ころ、という場合もあるそう)、2学年は奴隷、3学年は人間、4学年は神、だ。

防衛大学校の入学式 写真:Stanislav Kogikuアフロ
防衛大学校の入学式 写真:Stanislav Kogikuアフロ
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今回、取材に応じた元防大生の山本さん(仮名)は前編に続いて、こう語る。

「いったん“ガイジ”認定されてしまうと、もう、どうしようもありません。清掃の手間が悪い。プレス(アイロンがけ)が甘い。ミスした行為をやり直すのは当然ですが、転んで廊下に水をこぼしてしまったとき、『(小隊の)すべての居室で謝ってこい』と命ぜられ、勉学や研究に割けるはずの時間をつぶして、ひたすら入室要領を繰り返すことに虚しさを覚えるばかりでした」【5】

入室要領とは、居室へ入る際の動作、ノックの回数やドアを開ける際の手の動き、入室後の敬礼や名乗りをマニュアル化したもので、居室に入る際には必ずおこなうことになっている。そして、お辞儀の角度から、声の大きさまで、なにかひとつでも気に入らない点があれば、上級生は1年生に何度でも、入室要領のやり直しを命ずることができる。

つまり、「すべての居室に謝ってこい」の“真の目的”は、特定の下級生に入室要領を繰り返させる、いわば嫌がらせなのである。