「戦場はもっと不条理だぞ」

山本さんの清掃解雇は約2週間続いたが、相変わらず指導官が動くことはなかった。防大の学生舎には、上級生が割り振られた下級生の面倒をみる対番(1学年の対番は、2学年)という制度もあるが――。

「相談しましたが、『耐えろ』としか言われませんでした。『来年になれば、下(後輩)もできる』とか。結局、対番も連帯責任なんです。担当していた1学年が退校したら、上対番(その1学年を担当していた2学年)が、さらに上の3学年や4学年から叱られる。だから、とにかく問題を起こしたくないのでしょう」

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耐え続けた山本さんだったが、清掃解雇の解除後、今度は「自由時間に、居室から出ること」を禁じられてしまった。それが10日目に達したとき、ようやく、指導官が部屋長をたしなめ、“軟禁”が解かれたのだという。

「その際、指導官にかけられた言葉が忘れられません。『この程度の不条理でまいっているようじゃ、どうする。戦場はもっと不条理だぞ』と。これが戦場に行かない、行けない、米軍に守られている自衛隊に巣食うルサンチマンなのだと思いました」

あまりに突拍子もない、時代錯誤に満ちた話に、我が耳を疑うかもしれないが、同様の証言は枚挙に暇がない。たとえば、國分体制下で退校した新井さん(仮名)さんは、驚くべきことに「話がつまらない」という理由から、数々の嫌がらせを受けたという。