やりこみ要素と自己顕示欲

スプラトゥーン3にはコツコツプレイしているだけでは到底獲得できないものもある。一部のバッジがそうだ。
バッジとは、ネームプレートに3つまでつけられるもので、ゲーム内で様々な条件をクリアすることで入手できる。

「一定金額以上の買い物をする」のように、どのような実力でもコツコツと遊ぶことで入手できるバッジもあれば、高度な技術や知識が要求されるものもある。
例えばサーモンランの最難関バッジである通称「カンストバッジ」は、高難易度のバイトを最短でも7時間近くクリアし続けないと獲得できない、アルバイター憧れのバッジだ。

40時間ごとにリセットされるので、1日1時間という遊び方では到底到達できない。スプラトゥーン3はやり込み要素が極端に遠く、中間地点がほとんど無いのだ。

このシステムのキモは、ゲーム内でバッジを全て他者に見せる機能がなく、3つまでしかつけられない点にあると考える。
どれだけ頑張って入手したバッジであっても全てを同時につけることができないため、集める動機がゲーム内での自己顕示欲に繋がりにくくなっているのだ。
たくさんつけられるようにしてしまうと、全てを入手難易度の高いバッジで埋めたくなる人も出てくるだろう。その上、色々な種類のバッジをつけられると、各々の個性も弱くなってしまう。

一方、ベースとなるプレートや二つ名などカスタマイズ性の高い部分は、主な入手方法がくじ引きだ。好みのデザインに仕上げるために特定のゲームモードを長時間プレイしなければいけない、という事態が発生しにくくなっており、実力に関わらず、好きなネームプレートにカスタマイズすることができるようになっている。

これは非常によくできた仕組みだと感じる。

疑問点も

以上のように、スプラトゥーン3の少し不自由な要素は、前作までの課題を解決するための仕組みだと考えられる。しかし2022年の12月1日から新しいシーズンに変わり、一つ引っかかる点が出てきた。それが「期間限定品」の多さだ。

例えば、くじ引きには金銀銅の当たりがあるのだが、その中身が12月1日で変わったのだ。他にも、イベント限定のアイテムやランキング上位の報酬など、時期を逃すと頑張っても入手できない可能性があるアイテムがいくつか存在する。この要素は、これまでの説明と矛盾している。

というのも「種類が増える」であれば、コツコツ遊んでいれば必ず入手でき、毎日無理せず遊ぶ動機にもなる。しかし「種類が変わる」だと、欲しい人は無理をしてもらえる期間内に長時間遊ぶ必要が出てきてしまうのだ。

もちろん、プレイ時間を抑制するだけでなく、長く楽しめる工夫も必要だということは理解できる。しかし先述した通り、スプラトゥーン3は1日1時間以上遊ぼうとすると得られるものが少なくなる。端的にいうと、くじ引きを回すためのおカネが稼ぎにくい。結果、期間限定品という要素は、本来のゲーム性を無視した遊び方をするユーザーを生み出す要因にもなった。

この期間限定要素に、私が理解しきれない別の意図があるのか。それとも、根本的に「プレイ時間を抑制するための工夫」という解釈が間違っているのか。
今後アップデートで追加される要素なども踏まえて、注目していきたい。

何はともあれ、やり込むと不自由に感じる要素は、1日1時間だけプレイすると考えてみると、納得できるものがほとんどだ。
一歩間違えれば飽きやすくもなってしまうこれらの仕様は、逆に言えば、スプラトゥーンというゲームがとても面白いものだからこそできる挑戦だと感じた。

これからも、自分の生活に支障が出ない範囲で、シャケ退治に勤しみたいと思う。