観察から生まれるもの
名久井 ご自身の体験すべてを漫画に使うことはどうしてもできないと思うのですが、体験以外の創作の源は何なのでしょうか?
くらもち 生活をしていて、自分が持っていないところを持っている人や、「そういう考え方をするんだ」という人に出会うと、「この人を描いてみたい!」「この人を自分が料理したらどうなるんだろう」と思うことがあります。キャラクターが見えると、細かいエピソードも生まれてくるんですよ。
――さきほど「マーブリング」を使った絵が多いのは、予想外のものが生まれるのが楽しいから、と仰っていましたね。
くらもち はい。決まった通り、考えた通りにならないのが面白いと思っています。普通の生活をしながらいきなり面白いものが飛び込んでくるのが良いから、自分から求めず、アンテナだけはっています(笑)。
名久井 先生は観察者なんですね。
くらもち たしかに観察するのは好きです。私、昔から人付き合いが苦手なんですよ。誰かと一対一になって話すことに悩んできた人間だから、それまでよくわからなかった相手のことが見えてくる瞬間を面白いと感じるんです。それが自分の描きたいキャラクターに繋がるんだと思います。
対談<中>につづく
ⓒくらもちふさこ/集英社
撮影 細川葉子
取材・文 ハナダミチコ
デビュー50周年記念くらもちふさこ展―デビュー作から「いつもポケットにショパン」「天然コケッコー」「花に染む」まで―
<開催地>弥生美術館
<開催期間>2022年1月29日(土)〜2022年5月29日(日)
<リンク> https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html