分解して二度と遊べなくなった6面キューブ

銀玉鉄砲は危険! キューブは無駄! スライムは面倒!  親の天敵だった“駄菓子屋の廉価版おもちゃ”の今_5
建築学者が考案したという立体パズル

競技にもなっていて、説明する必要もない、有名なおもちゃの廉価版である。
この廉価版キューブには、鮮明な思い出がある。

初めてテレビでこれを見たとき、パズルとしての斬新さより、両手でカシャカシャ回転させ、次々に色が移動していく様が不思議でたまらず、めちゃくちゃ興奮した。
自分もやってみたくて仕方なかったが、本物はすごく高かったし「あんたは絶対飽きるから」と親も買ってはくれなかった。

それがある日、家の店先にあった。売り物ではなく、クジの景品だったと思う。

当然、欲しくてたまらず、小遣い全部をクジにつぎ込もうとさえ思った。それをいち早く察した親は、無駄にクジを引かせるよりも与えてしまったほうがいいと判断し、丸一日のお手伝いの報酬として、私はそれを手に入れることができた。駄菓子屋の子どもにはこういう特権もあった。

銀玉鉄砲は危険! キューブは無駄! スライムは面倒!  親の天敵だった“駄菓子屋の廉価版おもちゃ”の今_6
開封前から傷がついていたり、シールがずれていたりする

それとほぼ一緒のものが、やはり今の駄菓子屋にも売られていた。

銀玉鉄砲同様、本物より一回りサイズが小さいが、パズルとしての機能は満たしている。
ただ、動きが非常にぎこちなく、すぐに回転はしない。競技に使ったら破損してしまいそうだ。

銀玉鉄砲は危険! キューブは無駄! スライムは面倒!  親の天敵だった“駄菓子屋の廉価版おもちゃ”の今_7
どんな状態でも数秒で戻せる人間がいるのが信じられない

そして、数度回したら元に戻せなくなった。パズルが苦手なうえ、50代が目前という脳の老化のせいだろうか。

しかし子ども時代も同様に、すぐに元に戻せなくなり、安っぽいシールを張り替えて、見た目だけ元に戻した記憶がある。やがて構造が知りたくなって分解し、いつの間にかキューブはなくなってしまった。親の予想は正しかった。

この四角い箱を手のひらに乗せると、そんな思い出がありありと蘇る。