死ぬ前に人生で一番の見極め力を発揮せよ
お墓は「足りない」「墓じまい」など、これまでも問題に焦点があたっていたが、もっともセンセーショナルだったのは2022年10月下旬に北海道札幌市の納骨堂「御霊堂元町」の倒産だろう。こんな事態を予想して購入する人なんていないはずだ。
「お墓は破綻してはいけないビジネスにも関わらず、杜撰な経営だったのでしょう。納骨堂で利用期限が終われば合葬するタイプは、管理料を別途払わなくていいので購入しやすいのが利点です。
ただ、納骨堂は土地の権利ではなく、地上権を買うもの。経営が破綻したからと購入者の納骨堂の使用権は取り上げられませんが、別の会社が事業を継続するのか、税金が投入されて合葬されるのか。扱いが不透明です。
墓地の経営は公共団体・財団・宗教事業型がありますが、多死社会ではビジネスチャンスでもあります。困っているお寺に墓地経営をもちかける異業種からの参入、大手が下請けに丸投げするような目先の利益にとらわれた経営が増えることが懸念されます。“宗教法人は倒産しない”幻想を持ちがちですが、倒産は現実にありますから、契約内容をしっかり確認するという買う側の見定めが肝心です」(前出・長江さん)
さらに、長江さんは別の問題も提議する。
「65歳以上の3世代同居は10%以下です。伴侶のどちらかが亡くなった後は、ひとりで死ぬことになります。お墓があっても納骨する人がいないということになりますから、弁護士や司法書士などに死後事務委任の契約をしておくことです」
そんな死後にまつわる世界は、今後どうなっていくのだろうか?
「いずれ遺骨を全て燃やしきり、煙にするようになると思います。お墓を作りたくない、必要ないと思う人が出てきますから。核家族化がすすみ、今後は子供の有無にかかわらず、孤独死が大きな問題になります。近親者がいない場合は自治体葬になりますが、遺骨を誰がどう扱うかという話も煙になってしまえば解消します。
また、遠縁の方がいても、1回くらいしか会ったことがなければ遺骨の引取を拒みがちですし、親の遺骨であっても同じように考える人が一定数出るでしょうから、煙にすることを選ぶと思います。相互扶助の精神が失われた、個人主義で薄情な世の中になりつつありますね」(鵜飼さん)
なんとも切ない話だが、家族だけでなく、自分自身を見送るのにも相応な準備が必要な時代ということなのだろう。
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取材・文・撮影/Naviee