“内申書”だけでなく高校入試制度改革を
現在、坪田氏は名古屋市で「ナゴヤ・スクール・イノベーション」と銘打ち、個別最適な学び、協働的な学びを市立小中学校で取り入れる試みを行っている。
画一的な学びよりも、子どもひとりひとりに応じた学びで個性を伸ばす方が、社会に貢献するイノベーティブな人材を育てることは明白だ。しかし、こういったイノベーティブな教育にも調査書(内申書)の問題が立ちはだかる。
「小学校では、児童が自分でカリキュラムを作り、タブレットPCを使って学習を進め、そこで得た内容を発表する様子が見られます。ただ、中学校がイノベーショティブな授業を取り入れても、中学2年生の終盤か中学3年生からは、高校入試を見据えて従来型の教育に切り替えざるを得ません。これを打破していくことが課題です。
調査書の各教科の評価も、相対評価ではなく絶対評価なので、それぞれが立てた目標に対してどこまでできたのか、どれだけ成長したのかに着目すれば、個別最適な学びであっても評価は可能です。ただ、なぜその評価になったのかという説明責任を教員が負うことに抵抗感があるという声が聞かれます」
それをふまえて坪田氏が提案するのは、教師が評価するのではなく、生徒本人が中学3年間に学んだ内容を自己PRすること。その内容を学力検査の点数に加味して合否を決めるという形式だ。
「アメリカの大学入試で自分の実績をまとめたポートフォリオを作成するのと同じような感じですね。学校側も手間がかかりますし、受験生にとっても自己PRを作成するのは学力検査の勉強よりも大変かもしれませんが、イノベーティブな教育の延長線上にある入試としては、それが理想ではないでしょうか。
調査書の改革に加えて、高校入試の制度自体をイノベーティブな教育と接続していくような形に改革していくことが今後は必要だと確信しています。子どもの個性を尊重しながら自律と共生を学ぶ「イエナプラン教育」や、「モンテッソーリ教育」などの新しい教育で学んだ子も、安心して進学していけるモデルを名古屋市から発信していくことが現在の私の使命だと感じています」