1枚の写真から広まったギャスパー・ウリエルの人気
とはいえ、私にとって、「ロードショー」と聞いて真っ先に浮かぶのは、ギャスパー・ウリエルです。というよりも、ギャスパーの名前を聞くたびに「ロードショー」を思い出すというべきでしょうか。
カンヌ映画祭で見た『かげろう』(03)で注目していた彼に初めてインタビューしたのは、初来日の際。担当の編集者さんによると、以前、「ロードショー」に掲載されたそんなに大きくもない写真に、読者からすごい反響があったのだとか。
『かげろう』の不敵な表情の丸刈りくんの印象が強かった私は、その話を聞いてもピンと来なかったのですが、目の前に現れたギャスパーは聡明で爽やかな好青年。彼の写真にときめいた女子たちの感度の高さに感心すると同時に、憧れのスターを出演作で見るよりも前に、映画雑誌を飾る姿にときめいていた子供時代を思い出させてくれました。
以来、何度も「ロードショー」で取材させてもらった彼が真摯な美しい青年に成長するとともに、ビッグになっていくのを親戚のおばちゃんのような気持ちで見守っていたのですが、まさか『たかが、世界の終わり』(18)で取材したのが最後になってしまうとは。
死期が近いことを悟った主人公が家族を訪ねるというあの作品について、「もう彼が亡くなっているように感じた」と話したところ、「僕もそう思った」と受け止めてくれたのがとても心に残っています。
「ロードショー」のレーベル復活の知らせを聞いたのは、ギャスパーの突然の訃報にショックを受けた数日後のこと。ここにもまた個人的に不思議な因縁を感じているのですが、雑誌からウェブへとかたちは変わっても、1枚の写真にファンがときめくのは変わりません。「ロードショー」がこれからまた映画とスターへのときめきを届けてくれることを楽しみにしています。