最有力は新谷仁美「芯の強さを感じる」

――いつくらいから、練習量が多くなっているという変化を感じましたか?

ここ数年じゃないですかね。東京五輪前のMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ ※日本代表の選考レース)がきっかけとなったのかな。量をやらないと、という流れになってきたのかなと思います。そういう意味でもMGCは成功でしたね。

――たしかに、この2、3年はあわや日本記録というレースがたびたびありました。そんなレースを解説されていましたが、記録保持者としてはどんな心境なのでしょうか?

ついに来るか!っていう感じです。でも、なんだろう……。やっぱり複雑な気持ちでしたね。表向きには「もうそろそろいいと思います」って言っているんですけど、いざ破られそうになると、変な心情になりますよ。

マラソンのテレビ中継では、5㎞ごとに、「野口みずきの日本記録との比較」というテロップが出るじゃないですか。日本記録が更新されたら、このテロップがなくなるのかと思うと、寂しいなと思っちゃいますね(笑)。

――破られたときのことを想像されるんですね。

そうですね。結局、まだ破られずにいますが、タイミングや条件さえ合えば、更新するんじゃないかなって思う選手は何人かいますよ。

――その“何人か”を挙げていただけますか?

やっぱり一番は新谷選手です。オンオフがはっきりしていて、気持ちを切り替えられるし、考え方がしっかりしているというのか、芯の強さを感じます。

彼女の持っているものからしたら、まだマラソンではトラックのようにはうまくいっていませんが、ハマればマラソンでもハイペースで走りきっちゃうんだろうなっていう気がします。

野口みずきの17年間破られない女子マラソン日本記録を更新するのは誰? 「いざ破られそうになると、変な心情になります」_2
新谷仁美。東京五輪では女子10000mに出場

――新谷選手は、2023年1月15日にアメリカで開催されるヒューストン・マラソンに出場予定です。

彼女がハーフマラソンの日本記録を出したのがヒューストンだったので、いいイメージがあるんだと思います。

――新谷選手の他にはどうですか?

松田瑞生選手(ダイハツ)もいけそうな気がするんですよね。一山選手は、最近は移籍があったりしたので、環境が変わったのがどう出るか。

あとは、新谷選手や廣中璃梨佳選手(JP日本郵政グループ)のように、トラックで実績があり、スピードのある選手が、マラソンにチャレンジしたら一気にいくんじゃないかなと思っています。

まだハーフマラソンも走っていないので、10㎞よりも長い距離のレースになったときに不透明な部分はありますし、やっぱり走り方がトラック仕様なので、あのままいくと後半に潰れてしまいそうな感じはしますが……。

でも、リオデジャネイロ五輪はトラックで、東京五輪にはマラソンで出場した鈴木亜由子選手を育てた髙橋昌彦さんが指導しているので、トラックからマラソンにうまく持ってくるでしょうね。マラソンの距離に合わせられたら面白いだろうなって思います。