今季、試みたドラスティックなチーム改革
2012年に東北楽天イーグルスへ移籍し、今季、10年ぶりにDeNAベイスターズに復帰した藤田一也は春季キャンプ前日の全体会議に参加し、感嘆したという。
「ベイスターズの各部署から色々な報告があって、監督やコーチ、選手だけが野球をやっているんじゃないってことを改めて認識しました。同時にチーム、球団、会社全体で世界一を目指すということも共有できた。もちろん今年、優勝することも大事ですけど、その先を見据えることの必要性も痛感しましたし、なにより一緒に戦うんだという気持ちになれた、いいミーティングでしたね」
2016年には積年の願いだった横浜スタジアムの経営一体化、また同年に経営の黒字転換を実現させるなど、こと事業面に関してはすでに一定の成功を収めているといっても過言ではないDeNAベイスターズ。
だが、肝心のチームが1998年以来、リーグ優勝・日本一から遠ざかっていることは寂しいというほかない。
「おっしゃるとおり、スポーツビジネスを手掛けている以上、大前提としてチームが勝たなければ成功とは言えませんし、ファンの方々が納得しないこともわかっています。昨年はリーグ最下位、そしてコロナ禍もあってビジネスとしてもどん底でしたが、逆にこれをいい契機にするしかないと。改めてチームの勝利と経営的安定を求めていく集団として、これまで以上に変わっていこうということを球団全体で確認しました」
昨オフ、DeNAベイスターズは主力選手の複数年契約やコーチ陣の思い切った刷新など、この10年間では見られなかったドラスティックなチーム改革を行っている。
「毎年、総年俸が最も高いチームが優勝するのかといえば、プロ野球界は決してそう簡単なものではありません。例えば、昨年日本一になった東京ヤクルトスワローズを見て、ベイスターズとは何が違ったのだろうと突き詰めなければいけない部分はたくさんあったと思います」
「そこで今オフは必要不可欠なFA選手の流出阻止であったり、主力選手の複数年契約、またコーチ陣を今までにないレベルで刷新するなど、できるかぎりの試みをしたつもりです。DeNA体制になって11年。ファンの方々の『そろそろいい加減、勝つタイミングだろ』という温度感はひしひしと感じています。ぜひお応えできるようにしたいですね」
木村社長は、DeNAベイスターズ創設初期の2012年に外資系コンサルタント会社から転職。この球団に来た一番の理由は、幼少期から親しんだ野球がとにかく大好きだったことだという。
「自分自身が一番、仕事を楽しんでいる人間でありたいと思っています。ファンの皆さまに楽しんで盛り上がっていただくための演出をしているのに、私がつまらない顔をしているのは何か違うじゃないですか。だからまずは自分が楽しむことが、この仕事をやっていくうえで最低限の要素だと思っています」
横浜スタジアムに足を運ぶ老若男女を魅了し、彼らの心を打つ野球を実現するため、今季のDeNAベイスターズの戦いはシーズンが深まるごとに熱さを増していく。
撮影/下城英悟
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