「そこから逆算して、5年後には国内でDeNAベイスターズの黄金時代が始まっていなければなりません。今はまだデータの使い方や育成、組織づくりにおいて、メジャーリーグなど先行するスポーツチームのシステムを参考にし、取り入れているのが現状です。しかし、ここから徐々にその差をなくしていき、5年後には我々がやっていることを他が真似るような状況を作り出す。すなわちベイスターズが世界最先端の取り組みを行うスポーツチームとなることを目指します」

「その一方、ビジネス面でも同様にチケッティングや放映権など従来のモデルを踏襲しつつ、新規事業としてその領域で世界初のものを作っていくことが重要になると考えています」

コロナ禍に新たに生まれた観戦スタイル

現状、その試みの柱となりそうなのが、この数年、DeNAベイスターズが取り組んできた新たな観戦スタイルの提供である。

例えば『バーチャルハマスタ』は、メタバース空間上にもうひとつの横浜スタジアムを構築し、自宅でスマートフォンやパソコン、VRデバイスを使って観戦体験をするというものだ。参加者がアバターを操作して空間内を自由に動き回り、多くのファンとコミュニケーションをとることのできる次世代型のスポーツ観戦を可能にした。

メタバースにNFTも。横浜DeNAベイスターズが掲げる「世界一」戦略の全貌①_b
話題のメタバースにもいち早く対応した『バーチャルハマスタ』

2020年からスタートした『オンラインハマスタ』は、自宅からの応援を現場のハマスタに届けたり、球団OBのトークや双方向のコミュニケーションが魅力のシステムである。

また『ベイスターズプライムカメラpowered by au 5G』は、主催試合において、通常の放送とは異なる独自のアングル、例えば特定の選手を追うカメラ、球場全体を上部から見渡す俯瞰視点、そしてグラウンドに立っているような臨場感あふれる映像など、ユーザーが好きな画面に切り替えて楽しめるアプリだ。

興味深いのは、これらはいずれもコロナ禍で球場に足を運べないファンのために作られたシステムだということ。まさに「ピンチこそチャンス」を地でいく着想といえる。

「とはいえ、これらを“コロナ時代のコンテンツ”で終わらせるつもりはまったくありません。私が期待しているのは、以前のように横浜スタジアムが満員になった状態で、さらにオンラインという手段があれば、球場に入れなかったファンの皆さまも含めて、これまで以上の盛り上がりを生み出せるのではないかと思っています」