巨大な宇宙船が舞い降りたようなスタジアムも

まずは、地下鉄網だ。12年前のパンフレットに載せられた「ドーハメトロ」の計画図を見ると、ドーハ中心部をハブとして広く細かく張り巡らされているのがわかる。

【画像多数・W杯検証】「スタジアムが丸ごと海上に」「外壁全体がモニター」…12年前にカタールがブチ上げた“トンデモ計画”は実際にどれだけ実現されたのか?_2

だが、現在の状態はというと、この図に記された路線のうち、主要路線の中心部分が完成したに過ぎない。すべてのスタジアムに地下鉄でアクセスできるというのが、12年前のアピールポイントのひとつでもあったのだが、実際は全8会場のうち3つのスタジアムが地下鉄駅からバスに乗り換えなければならなかった。

12年前は地下鉄の影も形もなかったことを考えれば、ここまで整備されたことは十分驚きに値するが、当初予定していたものにはならなかったというのが現実だ。

また、大会の顔とも言うべきスタジアムに目を移すと、12年前の資料で示された完成予想図がとにかくスゴかった。

スタジアムが丸ごと海上に突き出し、ボートでアクセスできるようになっているものもあれば、巨大な宇宙船が舞い降りたようなSFチックなものもあり、よくも悪くも非日常的。当時は「こんなもの、本当に作れるの?」と思ったものだが、果たして12年後の現実はどうだったのだろうか。

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まるで未来都市を思わせる12年前のスタジアム完成予想図

12年前に使用が予定されていたスタジアムの数は12。実際に今大会で使われたスタジアムの数は8。まずは単純に、数の上でも4つ減っている。しかも、スタジアム周辺に殺風景な荒野が広がり、12年前に描かれていた夢の世界とは大違い。そんなスタジアムがいくつかあったことも確かな事実だ。

スタジアムの外観にしても、中東風のランタンやアラブの人たちがかぶる帽子をイメージしたものなど、近未来的というよりはむしろ伝統的なデザインを取り入れたものが多く、デザインコンセプトは大きく方向転換された印象を受ける。