イラっとした感情のまま「なんで片づけないの?」と言わない
▼何千ものモノを管理する女性
女性が管理するモノが多い理由は、妻の家事分担の多さも関係しています。
共働きが主流となった現在でも、家事分担の男女差は依然として存在するというのが現実だからです。
国立社会保障・人口問題研究所が令和元年9月に公表した「第6回全国家庭動向調査」によると、「名もなき家事の遂行」の役割分担について、表4のような結果が出ています(集計対象は、配偶者のいる女性6142人)。
それによれば、「食材や日用品の在庫の把握」「食材の献立を考える」は約9割が妻の仕事、「ごみを分類し、まとめる」は約8割が妻の仕事と回答しています。
一方、夫が積極的に関与しているのは「電化製品の選定」くらいです。
また、育児に関しても、「平日の昼間、第1子が1歳になるまでの世話」は約9割を妻が担に ない、残り約1割も夫ではなく親(祖父母)が担っています。このような社会的な背景から考えると、大半の家庭では、子どもの身の回りの用具も全すべて、「妻1人で管理している」と言えそうです。
私たちは1人あたり平均1500点のモノを所有していると言われますが、そのうちの半数近くが、食品・日用品などの消耗品です。
夫婦と赤ちゃんの3人暮らしで家事負担が妻に偏っていた場合、夫が片づければいいのは自分の私物500〜700点であるのに対し、妻が管理する対象は自分の私物500〜700点+家族共有の食品・日用品、そして子ども用品が加わり、合計で3000点程度にもなります。洗濯を妻1人で行なっている場合は、夫の洋服も事実上妻が管理していることになり、対象点数がさらに増えます。
ここで重要なのが、片づけの手間(工数)は、点数が増えた分だけ増えるというわけではなく、持ち物のアイテム数やカテゴリ数によって指数関数的に急増するということです。つまり、管理すべきアイテムの対象数が圧倒的に多い女性のほうが、「片づけの難易度がはるかに高い」環境にいると言えます。
▼「なんで片づけないの?」は禁句
株式会社サマリーが関東在住の男性300人・女性300人に対して行なった「片づけに関する調査」を基に、「性差」の実態の調査では、「片づけに対する自責の念」についても、次のような結果が出ています。
「私はもっと片づけをした方が良い」という設問に対し、5段階で評価をしてもらったところ、7割以上の女性が「そう思う」(*)と感じています(男性は6割未満)。男性以上に、女性は片づけに対する危機感を持っているのです。
家事を抱えこみ、片づけられない状態で、罪悪感に苛さいなまれている妻に対して、夫からの「なんで片づけないの?」というひと言は、深い傷を与えてしまうでしょう。
口出しするだけだったり、目についたモノを突然捨てるなどの行為は、信頼関係が傷つくだけで何の効果もありません。「私がやっているように捨てなさい」と命令するのも、パートナーの機嫌を損ねるだけです。自分の私物しか管理していない夫が、自分のほうが片づけが得意だと思うのは錯誤です。
まずは、夫婦の家事分担を見直して、ドラッグストアで買える日用品の管理は夫が行なうなど、妻が管理するカテゴリを減らせないかどうか話し合ってみてください。
*「とてもそう思う」、「ややそう思う」、「どちらともいえない」、「あまり思わない」、「まったくそう思わない」から1つを選択形式で尋ねた。ここでは、「とてもそう思う」と「ややそう思う」を「そう思う」にまとめた。