試合の激しさが増すスターダム。愛川ゆず季「どこまで行くんだろう?っていう恐怖感でわたしは引退した」団体の進む先とロッシー小川が泣いた試合_3

スターダムは一つのテレビ局

愛川 2021年3月に日本武道館でスターダム10周年記念大会が行われて、わたしもランブルで出させていただいて、風香さんも解説で出させてもらったんですけど、ブシロードさんというバックも付いて迎えた10周年はどうでしたか?

小川 いい大会だったと思いますよ。でも、まだまだ上があるなとか、この続きがあるなとか、もっと大きい会場でやりたい、もっとこうしたいっていう欲が余計に出てくるよね。やらないんだったらそういう世界がわからないから、それで済むんだけど。そこに踏み入れると、もっともっとってなるから。

愛川 小川さん、武道館から帰宅して、家で「岩谷麻優vs世志琥」の試合を観てたら、涙がターって流れたって言ってて。

風香 えー! 嬉しい! 感動した、いま。

愛川 小川さんがプロレスを観て涙を流すなんて……。

小川 いや、結構あるんだよ。

愛川・風香 えーーー!!!

小川 家の中では結構ある。試合で泣くんじゃなくて、シチュエーションだね。

愛川 わたしの試合はありました?

小川 ゆずポンの試合はないよ。相手を痛めつける試合だから。

愛川 アハハハハ!

小川 最近だね。年を取ってきたんだよ。

風香 でも嬉しい! 世志琥ちゃんと麻優ちゃんで泣いたっていうのが。

小川 やっぱり、麻優のほうが勝ってしまったなっていうのが一つだね。本来は違っていたのが、この10年で逆転したんだなっていう。

愛川 プロレスを観て涙を流す人は心が綺麗だと思うんですよ。小川さんもまだ心が(笑)。

風香 たぶんその綺麗さじゃなくて、自分が育てた子と、そうじゃなくなってしまった子が交わったときに、自分が育てた子が勝ったっていうのじゃないですか?

小川 それもあるね。単純にいい試合とかでは泣かないけど、そこになにか刺さるものがないとね。

愛川 では、今後のスターダム。小川さんはなにを見てやっているんだろうって。

小川 いまグループとしてやっていて、売上目標は当然あるだろうし、それに向かって行くっていうのは経営陣の考えであって、ビッグマッチを重ねる中でお客さんを入れていかなきゃいけない。でも育成もしていかなきゃいけないし。いい選手がいたら抜擢しなきゃいけないし。まあ、育成が一番大事なんじゃないかな。

愛川 わたしがいた頃って、わたしがいて、みんながいる中で、一人プッシュする選手がいたと思うんですけど、いまは大会ごとに主役が変わっていってるじゃないですか。それって、選手が増えたからですか?

小川 絶対的な人がいないんじゃないの? 平均してみんなできるから。あと、観客を飽きさせちゃいけない。だから毎回、主人公が違う。俺はスターダムって、一つのテレビ局だと思っていて。テレビ局の中にいろんなドラマがあるんですよ。ファンの人はそれぞれが好きなドラマを観てもらえばいいと思う。いまは一つのドラマじゃないんですよ。いまの時代に伝えられるスターを作っていきたい。スターを輩出するための団体がスターダムだからね。

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取材・文/尾崎ムギ子 撮影/神田豊秀

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