壮絶な修行の先に見つけた「掃除」の教え
――織田信長による比叡山焼き討ち(1571年)以降、50人目となる千日回峰行の満行者、北嶺大行満大阿闍梨ともあろう方が「掃除」にまつわる本を刊行されたことに驚きました。
もっと小難しい言葉で、深淵な理屈を申し上げればよかったでしょうか。
――いえいえ、本当にやさしい語り口だったので、しっかり伝わったというか。
法話でも心がけていますが、なにより嬉しい言葉です。難しい言葉を使って伝わらない、というのは、昔ながらのやり方を守っていても実際は綺麗になっていない掃除、と同じ始末になってしまいますので。
――思春期の子供とうまく付き合うための「床だけ掃除」や、日々の掃除のルーティンに家族を巻き込む方法など、まったく納得の生活の知恵が満載されているだけでなく、「大きな壷」や「日常の言葉を整える」など、家の内外、自分の内外にあたる心と身体を整えるための「気付きの本」として拝読しました。
では、今日もお掃除をなさってから、ここに?
――帰った後、気力があれば……。
じつは私も、今日はまだ朝のおつとめをしただけです。これから仏間を掃除して、床の間に花を生けようかと。
――なかなか、思うようには生きられないものですね。恥ずかしいかぎりです。
できないことは、できないでよろしいのです。長所をもって、短所をおぎなう。そう考えて、気楽にやっていきましょう。
取材・文/山田傘 写真/打田浩一












