男優が5回も登場!
表紙に目をむけると、1990年は12号のうちなんと5回も男性が表紙を飾っている。マイケル・J・フォックスが2回、トム・クルーズが1回、前述のバットマンと、なぜかマシュー・ブロデリックだ。
ブロデリックといえば、いまの若い人には『セックス・アンド・ザ・シティ』のサラ・ジェシカ・パーカーの旦那という認識しかないかもしれないが、80年代は若手ながら舞台経験が豊富な演技派として注目されていた。『ウォー・ゲーム』(1983)で主演を務めたのち、ジョン・ヒューズ監督の傑作『フェリスはある朝突然に』(1986)に出演して人気者に。1990年はショーン・コネリー、ダスティン・ホフマンと共演したシドニー・ルメット監督作『ファミリービジネス』(1989)が公開されている。
ルックスも演技力も抜群なのに、いまひとつ伸び悩んだ原因は不明だ。本人が名声を嫌ったのか、作品の選択を間違えたのか? とりあえず、『フェリスはある朝突然に』を未見の方は、ぜひこの機会にチェックしてみてほしい。『デッドプール』(2016)の元ネタのひとつになっているし、ジョン・ヒューズ監督が脚本を執筆した『ホーム・アローン』(1990)の原形にもなっている。
本作と『ブレックファスト・クラブ』(1985)は、いまでも通用する80年代青春映画の傑作だ。
新人ではシャルロット・ゲンズブールが、いつもの「フランス女優枠」で登場。歌手で映画監督のセルジュ・ゲンズブールと、女優ジェーン・バーキンの間に生まれた彼女は『なまいきシャルロット』(1985)で初主演を果たし、その後も、『小さな泥棒』(1988)『太陽は夜も輝く』(1990)などが立て続けに公開されている。
9月号の表紙を飾ったモデル出身のトレイシー・リンは、『フライトナイト2/バンパイアの逆襲』(1988)で注目を集め、『侍女の物語』(1990)『クラス・オブ・1990』(同)に出演。日本ではアイドル的な人気を博した。
ちなみに、読者投票によって決まるシネマ大賞は、89年に続いて、マイケル・J・フォックスが男優賞を連続受賞している。人気シチュエーションコメディ『ファミリー・タイズ』と、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでトップスターの仲間入りを果たした彼は、シリアス路線に転向。ジェイ・マキナニー原作の『再会の街 ブライトライツ・ビックシティ』(1988)やブライアン・デ・パルマ監督のヴェトナム戦争映画『カジュアリティーズ』(1989)といった野心作に挑戦。演技の幅を広げようとしている時期だった。
◆表紙リスト◆
1月号/バットマン(マイケル・キートン) 2月号/マイケル・J・フォックス※初登場 3月号/グロリア・イップ 4月号/アリッサ・ミラノ 5月号/シャルロット・ゲンズブール※初登場 6月号/マイケル・J・フォックス 7月号/グロリア・イップ 8月号/トム・クルーズ 9月号/トレイシー・リン※初登場 10月号/リー・トンプソン 11月号/フィービー・ケイツ 12月号/マシュー・ブロデリック※初登場
表紙クレジット:ロードショー1990年/集英社