ダイバーよりもサーファーが襲われやすい?
––日本近海には何種類のサメが生息しているのでしょうか。
約100種類以上はいると思います。ただ、その半分以上が深海の種類なので、沿岸で見ることはないでしょう。そもそも沿岸まで寄ってくるサメはそれほど多くはないんです。シュモクザメ、いわゆるハンマーヘッドシャークの小さいものや小型のサメが沿岸に出没することはあるでしょう。
あとこれは稀なケースですが、ホホジロザメが東京湾の川崎港で見つかったこともあります。
––なんと! ホホジロザメといえば、映画『ジョーズ』で人を襲っていたサメですよね。
はい。ただ、映画作品の影響で人喰いザメのイメージを持たれているのですが、人間を襲うことはほとんどないんですよ。このことは、フロリダ大学でサメ研究をしている海洋生物学者ギャビン・ネイラー氏が、Webサイト「International Shark Attack File」をまとめています。
それによると、2020年から2021年にかけてのシャークアタック、つまりサメから人への攻撃件数は126件です。死亡例となると9件しかない。日本では1件もありません。
海でサメに襲われる確率は非常に低いので、むしろ海に行くまでの交通事故に気をつけたほうがいいですね。
––そちらのほうが確率的には高い、と(笑)。
基本的にサメが襲うのは死んでしまったり、弱ったりして海に浮かんでいる生き物なんです。ホホジロザメはたしかにアザラシやアシカなどの大きな哺乳類を捕食しますが、そもそも個体数が少ない。日本では年間で数匹捕獲されるかどうか、というくらいですから。
私もできればどこかで出会いたいと思って、船でいろいろな海に出ていますが、ホホジロザメに会ったことは一度もないです(笑)。
––ホホジロザメはどんなところにいるのでしょうか。
日本の近海だと、夏場は北海道あたりの水温が低い海にいると思います。なので、ビーチリゾートでバカンスしている人をホホジロザメが襲う、みたいなことは実際にはありえないですね。
あとビーチでバカンスしている人よりも、サーフィンのほうが危ないです。何をしているときにサメに襲われたかというデータで、一番多いのがサーフィンをしているときなんですよ。
––サーファーは襲われやすいんですね。
サーフボードの上に腹ばいになってパドリングしている状態が、死んだり弱ったりして海に浮かんでいる生き物に見えるのでしょう。あと、サーフィンをやっているときに海中はそんなに見ないですよね。だからサメの接近に気づきにくい。
一方、ダイビング中に襲われるケースってほとんどないんです。ダイビングは基本複数人で潜りますし、慣れているインストラクターはサメの接近にも注意を払っている。遠くにいる状態でサメを見つけられたら、ほとんど危険はありません。
––万が一、海でサメがすぐ目の前にいたらどうしたらいいのでしょうか。
襲われたら、頭部を殴ったり蹴ったりして撃退するしかないでしょう。
反撃は、本当に最後の手段ですが。
––では、クマに遭遇した場合で言われるように「死んだふり」をするのはよくないんですね。
死んだふりして浮かんでいたら、むしろサメに襲われやすくなります(笑)。絶対にやめてください。