「頑張り力」こそ大きな財産
―― キャリア教育に相当するようなこととして、ほかに、沼田さんはどんなことをされていますか。
日本ってあまりお金のことを話さないという風潮があるけど、僕はお金のこともどんどん子どもたちに話しています。例えば、値上げに文句を言う人がたくさんいるけど、自分の商品が値上げできないと給料も上がらないよね? みんな、ユーチューバーになりたいって言うけど、どのくらいの人がいくらくらい稼げてるか知ってる? とか。子どもたちは「社会のお子様」であって「学校のお子様」じゃない。だから僕が一番大切にしているのは、実社会とつながる勉強なんです。日本の教育も少しずつ変わってきてはいるけど、まだまだそこのつながりが弱いんですよね。
――今後は、AIの台頭で仕事の様相がだいぶ変わるとも言われています。子どもたちに必要なのはどんな力でしょうか。
これまでは「自分がどう生きるか」が注目されがちだったけど、AIが入ってきたことで「どんな仲間と生きるか」のほうが大事になってくるのかなと。苦手なことは誰かに任せればいいし、どんなチームでやっていくのか、そのチームをつくる力が問われるんだと思います。もう、一人で全部できるやつがすごい時代は終わりつつあって、何か局所的にすごい力をもっているやつのほうが強いと思うんですよ。
―― そうなると、個性が重要になってきますよね。日本の教育は、個性が育ちにくい側面もあるように思うのですが。
それは、そういうなかで育った人が先生になっているからですね。強い個性を許さない人はまだまだいるけど、それもだんだん変わってくると思います。ただ、間違えちゃいけないのは、個性はあっていいけど、同時に常識も必要だということ。そこは指導する側も意識する必要がありますね。
―― 子どもたちが自らの力で仕事を見つけていく際に、最も大事なことは何でしょうか。
まずは、好きなことを見つけたらとことん頑張って、それに邁進してみてほしいですね。その結果、その夢が実現できなくても別にいいんですよ。少なくとも邁進したことで「頑張り力」はつくし、その力がほかで発揮される可能性もあるわけだから。それこそが財産であって、これは時代が移ろっても変わらないと思うんです。一方で、本書にも出てきますが、「好き」なものから考えてみて、うまくいかなければ、「得意」なことや「イヤ」なことから考えてもいいと思います。その得意にも実は色々ある。例えば、同じフォトグラファーでも、写真撮影の技術がすごい人もいれば、撮影現場でのコミュニケーション能力が抜群という人もいますよね。それだって「得意」を活かしているわけです。あと、好きな仕事で稼げたら一番だけど、「好きじゃないけど仕事としてはこれをやる」だっていいと思う。僕も最初から教師を目指していたわけじゃないですしね。
なりたい仕事を見つけるまでの道のりって、必ずしも一本道じゃないと思います。いろんなアプローチがあるし、途中で変えてもいい。子どもたちには、そんなことをこの本から感じてもらえたら嬉しいですね。
※「満点ゲットシリーズ せいかつプラス」に関する詳しい情報は、公式HPをご覧ください。
https://kids.shueisha.co.jp/seikatsuplus/