1.先が読めない展開が求められている
まず、私たち視聴者がオリジナルストーリーを求めるのは、ひとえに「先が読めない展開にワクワクしたい」からだ。
SNSでの考察祭りが話題となった2019年放送ドラマ『あなたの番です』(日テレ系列)や、2021年放送ドラマ『真犯人フラグ』(日テレ系列)もそうだったように、伏線が命のミステリものは、先読みできる材料があったら楽しみが半減してしまう。伏線回収の流れに違和感はないか、結末に整合性があるかなど、評価の指標はさまざまだが、オリジナルストーリーであるだけで視聴者のワクワクは担保されているように思える。
その点で言えば、現在放送中のドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系列)も伏線命のミステリものであるが、原作漫画が存在し、おまけに完結済みのようだ。
実写には実写なりの魅力があることに違いはないが、ストーリーが先読みできる状態でどれだけ視聴者を惹きつけられるかは、力量が問われる部分だろう。
2.実写化恐怖症?
人気の高い漫画や小説が実写化される流れは、半ばフォーマット化しており、受け手である視聴者も慣れてきつつあるが、その一方で「実写化恐怖症」に近い現象を起こしている側面もあるように思える。
過去に実写化された作品を思い起こすと、いたずらに原作が弄ばれたと感じてもおかしくない事例もある。漫画や小説を愛する者にとって、次に標的となるのはどの作品か……と肝を冷やしているのは、筆者に限らないはずだ。原作は原作、実写化は実写化と、別物として割り切る以外に、対策はないのかもしれない。
その点、原作のないオリジナルストーリーであれば、むやみにヤキモキする必要はない。
3.視聴率は原作もの<オリジナルストーリー
人気の高い原作であれば、実写化した際の視聴率や興行収入も見込める。ドラマ、映画ともに原作ものが増える背景には、そんな制作側の事情もあるのかもしれない。
しかし一説には、原作もの以上に、オリジナルストーリーのほうが視聴率が高い傾向にあるという分析結果もあるという(※参照 )。実情は坂元裕二や森下佳子など、売れっ子脚本家の手がけるオリジナルストーリーほど当たりやすい背景があるのだろうが、視聴者が原作ものに飽きてきているというのもまた真実だろう。
昨今で言えば、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)や『最愛』(2021)など、SNS上で大きな話題を呼んでいるのはオリジナルストーリーであることが多い。
前述したように、先の展開が読めないワクワクさと、原作のイメージにとらわれず物語に没頭できる新鮮さが、視聴者の心を惹きつけるのだろう。
現在放送中の2022年秋ドラマでは、早くも木曜劇場『silent』が今季最大のバズを生みつつある。
原作に頼らない直球な姿勢は、どれだけの反響を呼ぶのだろうか。
文/北村有