甲子園球場の土の配合は本当に美しい

――その土を今度は整備する立場に。きっかけは?

小学校1年生からサッカーを始めて、ゴールキーパーをやっていたのですが、飛び込んだときの衝撃が蓄積して、大学生のときに首を痛めてしまい……。

競技をやめることを決断したときに、スポーツに携わる仕事をしたいと思ったんです。

大学がもともとスポーツ学科だったということもありましたし、支えてくれる人がいるからスポーツができることを自分が現役のころから感じていたので。

そんなことを考えたときに、地元の阪神園芸に興味を持ちました。

――入社2年で早くも甲子園デビュー。

メディアに取り上げていただいたことで緊張やプレッシャーもありましたが、一番は選手たちのことを思って整備をすることだったので、まわりは気にせずやるべきことをやろうと。

ただ取り上げられたおかげでいいこともあって、審判の方から激励されることもありました。

私と同じで初めて甲子園で審判をするという方からは「お互いデビュー戦やね。がんばろう」と声をかけていただいたりもしました。

「私の活動を見て、女性の甲子園デビューが増えてほしい」女性初、甲子園グラウンドキーパーが聖地に思うこと_2
プロ野球、阪神タイガース主催試合の甲子園。そのイニング間にグラウンド整備をする阪神園芸の職員

――今大会の一番の思い出は?

甲子園で、あれだけ大勢のお客様の前で仕事ができたことです。
私はライン引き担当で線が曲がらないようにとても集中していたので、まわりを見渡す余裕なんてありませんでしたが。

――プロ野球の試合でのグラウンド整備の違いは?

実はまだプロ野球ではやったことがなくて。弊社のグラウンドキーパーを行う部署はスポーツ施設部と甲子園施設部のふたつがあって、私が入社後に配属されたスポーツ施設部は甲子園球場以外の、高等学校のグラウンドや大学の専用グラウンドなどから依頼を受けて、単発で出張整備することがメインなんです。

――出張整備はどのような仕事?

野球場って定期的に大掛かりな整備を入れないとグラウンドがボコボコになってしまうので、図面を作る際に用いる道具で勾配などを測定して、足りないところに土を足して整備します。まるで道路工事みたいなんですよ。

「私の活動を見て、女性の甲子園デビューが増えてほしい」女性初、甲子園グラウンドキーパーが聖地に思うこと_3
道路工事のように大掛かりな整備をすることも

――球場によって個性はある?

球場ごとに土の配合が違って、その割合によって水抜けが変わってきます。真砂土という白い土だけのグラウンドもありますし。
ただ、黒土が入ってるほうが、これぞ野球場という感じで見栄えがいいですよね。そういう意味では、甲子園は本当に美しい球場だと思います。