それでも日本は厳罰化を進めるのか

このような海外の大麻解禁の流れに逆行して、日本の厚生労働省はいま、新たに「大麻使用罪」を創設して厳罰化を進めようとしている。しかし、それによって何がもたらされるのかと言えば、バイデン大統領も指摘したように、大麻の使用や所持で逮捕され、刑務所に送られ、人生を狂わされる人を増やすだけであろう。

考えてみれば、「ダメ、ゼッタイ!」に象徴される日本の大麻政策は、米国の指示でつくられたものである。その詳しい経緯については拙著で説明しているが、終戦後の1948年に、当時の日本政府は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に命じられて、それまで規制の対象となっていなかった大麻を禁止するための「大麻取締法」を制定した。

米国政府が日本にそう指令したのは、米国内の石油・化学繊維業界などの圧力や政治的な思惑から大麻を禁止していたからである。つまり、米国は自国の政策を日本に押し付けたわけだが、当時の日本政府の担当者も、GHQから大麻取締法を作るように指令がきた時は、「驚いた。何かのまちがいではないかとすら思った」と正直に述べている。

しかし、その後、米国では大麻の健康影響に関する科学的および医学的な研究調査が進み、その中毒性や依存性などを含めて大きな問題はなく、普通の成人が少量の大麻を使用しても問題はないこと、さらに様々な医療効果があることなどがわかってきて、州レベルの合法化が急速に進んだ。このような状況を踏まえ、バイデン大統領の今回の発表に至ったのである。

日本に間違った大麻政策を押し付けた「張本人」である米国の大統領がその過ちを認め、それを正すための行動を取り始めた。それにもかかわらず、日本はさらなる厳罰化を進めるのか。厚労省の担当者は、バイデン大統領の「誰も大麻を使用または所持しただけで刑務所に入れられるべきではない」というメッセージをどう受け止めているのだろうか。

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