昭和のセット文房具は密度感がたまらない!
昭和60年代のバブル景気真っ最中に流行したのが、セットもの文房具といわれるもの。コンパクトな文房具群を専用ケースに収納したもので、とにかくギミックがギュッと高密度に詰まった感じが人気だったのである。
そしてその流行の先駆けとなったのが、昭和59年に発売されたプラスの「チームデミ」。
小さなプラケースを開けると、ウレタンベース(グレーの部分)にハサミやホッチキスなど小さな文房具が7点、みっちりと収まっている。
小さくてもちゃんと使える実用性と、整頓されたお道具箱のような密度感がウケて、累計販売数は650万セット以上(加えて、そっくりの偽物も大量に出回っていた)。まさに昭和のモンスターヒット文房具なのだ。
そしてこの「チームデミ」が、令和2年に復刻。しかも世界的なプロダクトデザイナー 深澤直人氏の手によるリファインと来たら、もう昭和生まれの文房具マニアにはたまらない。
ケースサイズは先代と同じで、パカッと開けた際の文房具の配置もほぼ同じ……つまり手に取った第一印象は昭和のままなのだが、実は文房具を一つ一つよく見ると、微妙な違いが感じられるはずだ。
例えばハサミを開いてみると、刃が微妙にカーブしているのが分かる。これはプラスが得意とする“ベルヌーイカーブ刃”と呼ばれるもので、刃先から根元までシャープな切れ味を生み出す、平成生まれ(2012年)の技術なのである。
他にも、カッターナイフの刃が、切れ味が長持ちする厚刃になっていたり、液体のりが紙にシワを生じにくいタイプになっていたりと、全てにおいて昭和→令和の技術的なアップデートが施されている。
ケースの収納スペースも、文房具型にくり抜かれたウレタンベースから、マグネットによって文房具をピタリと吸い付けて収納する仕様に変更された。
これは、シャープな雰囲気を出しつつ、ウレタンと同様にみっちりと収まる密度感も合わせて演出する仕組みだと思われる。
令和の技術で作られた文房具セットながら、昭和レトロな雰囲気もきちんと守る。これこそが、当時の文房具マニアと最新文房具ファン、どちらも満足できるWin-Winの復刻と言えるだろう。