川崎の新しいメディアの取り入れ方

――川崎ブレイブサンダースは、YouTubeやTikTokといった新しいメディアを積極的に活用し、スポーツビジネス界で大きな注目を受けています。公式YouTubeチャンネルの登録者数は、プロ野球やJリーグのチームの中でも屈指。篠山選手を始めとする選手たちも公式チャンネルでYouTuber顔負けの活躍を見せていますが、当初はどんな思いでしたか?

正直、あまりピンと来てなかったですね。Bリーグ初年度で準優勝まで行って、リーグ自体も盛り上がって「バスケ、来てるじゃん。川崎市内での認知も広がってるし絶好調じゃん」って自分たちに変に自信があったので、話を受けたときは「そんなことやらなくても十分でしょ」って思っていました。ただ、実際始めてみると、全然そんなことはなくて。ホームゲームの来場者アンケートで「YouTubeでクラブを知った」とか「YouTubeが面白かったから来場した」という人の割合がめちゃくちゃ高くて、びっくりしたのをよく覚えています。

「骨格ストレートでブルベです」 Bリーグ川崎・篠山竜青が放つ存在感_5
「骨格ストレートでブルベです」 Bリーグ川崎・篠山竜青が放つ存在感_6

――8月末には、はじめしゃちょーら有名動画クリエイターたちとホームアリーナで試合するという前代未聞の試みが催されました。チケットは全席完売。YouTubeで行なったライブ配信では、同時接続数が32万人だったそうです。

この同時接続数、国内のYouTube史上7位だったらしいです。うちのYouTubeチャンネルの登録者数も一晩で3万人増えたそうです。

――すさまじいですね。10代、20 代の女性がとても多く、さながらアイドルのコンサートのような雰囲気でした。

動画クリエイターというまったく畑の違う人たちとイベントをすることで、既存のファン以外の人々をこれだけ振り向かせることができた。すごい影響だなと改めて感じました。
以前、テレビの企画で芸能人の方々とバスケをしたときは、収録だったし編集も入るしで何の心配もしてなかったんですけど、今回は台本なしで、観客も入れた生のイベント。ちゃんと盛り上がるのか、面白いコンテンツになるのかってめちゃくちゃ不安でしたけど、クリエイターさんの力もあり、とてもいいものになったと思います。

――今の10代20代は短時間動画や、早送り・巻き戻し、倍速に慣れていて、映画やスポーツ観戦などの長時間エンタメを避ける傾向があるそうですが、今回のイベントのデータや会場の雰囲気を鑑みると、やり方次第だと感じさせられました。

若い人たちだって、好きなものに関しては無条件に時間やお金も投じるでしょうしね。スポーツ観戦を退屈だと感じる層を取り込むためには、「スポーツを見に行く」という概念自体をぶっ壊すことが大事かなって思っています。
「スポーツ」でなく「イベント」や「エンタメ」、「見に行く」でなく「遊びに行く」、「体験しに行く」みたいな、これまでとは異なる価値を見出していく。今、Bリーグ各クラブが推し進めている1万人規模の大型アリーナが誕生したら、さらに色々なエンタメが楽しめるようになるんじゃないかと思います。

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――今季よりBリーグは、コロナ禍に端を発する入場規制を撤廃し、より多くの観客を迎え入れることになります。改めて、プロバスケの魅力ってどんなところにあると思いますか?

なんでしょうね…。点がいっぱい入る、コートや選手との距離が近い、迫力があるってところかな。川崎に関して言えば、会場の装飾やDJタイム、休憩時間のイベントなどいろいろな工夫をしていて、さっきお話したようなイベントとしての楽しさも味わえると思います。

――まだBリーグを観戦したことがない方に、おすすめの選手を挙げるとするなら?

それはやっぱり、昨シーズンのリーグMVP・藤井祐眞(川崎)じゃないですか。他の選手の3倍くらい動き回って、小さい選手が大きい選手に立ち向かっていくっていう多くの人にとってのヒーロー像を体現する選手です。祐眞のプレーを見たら、きっとすごく勇気をもらえると思いますよ。

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インタビュー後編 Bリーグ川崎・篠山竜青「頭でっかちにならずに、もっともっと自分を出していかねば はこちら

取材・文/青木美帆 編集/星山江里可 撮影/コザイリサ ヘアメイク/山口裕子