変換精度以外にも注目ポイントはいろいろ
自動文字起こしツールを選ぶ観点は、変換精度だけではない。続いては、それぞれのツールの長所と短所をまとめていこう。
まずCLOVA Noteは、なんといっても無料で使えるのが大きい。また、音声ファイルを読み込んだとき、解析の時間がずば抜けて速かった。さらに、声を分析して「参加者1」「参加者2」といったように切り分けを行なってくれるが、その精度も高かった。WEBブラウザ版のインターフェイスもすっきりしていて使いやすく、多くの人におすすめできるツールだ。
Nottaは、聞き取りにくい部分も処理を試みてくれるため、抜け落ちが少ないのがメリット。WEBブラウザ版のインターフェイスもすっきりしている。さらに、YouTubeなどの音声も翻訳できるGoogle Chrome機能拡張やビデオ会議用の文字起こしツール、外国語の翻訳機能など豊富な機能を搭載している。これらの機能に魅力を感じる人ならNottaがおすすめだ。
Word Onlineは、文字起こし専用ツールというわけでないため、インターフェイスは少しわかりにくい。また、出来上がった文章が細切れになりやすく、内容を把握しにくい点もデメリットだ。しかし、聞き取りにくい部分の変換精度が高く、かなり頼りになる。Microsoft 365の加入が前提になるが、企業がMicrosoft 365のグループ版を導入しているなら、個人で契約しなくてもこの機能を利用できる。対象となる人は案外多いのではないだろうか。
こうしたツールごとの違いを踏まえ、自分にとって一番の自動文字起こしツールを見極めてみよう。筆者の場合、インタビューの内容をざっくりと振り返るときにはCLOVA Note、対談原稿の作成のために丁寧に言葉を拾いたいときはWord Onlineを使っている。また、Google ChromeにはNottaの機能拡張をインストールして、WEB動画の全体像をサッと把握したいときに活用している。このように、目的に応じて複数のツールを使い分けるのもいいのではないだろうか。
おすすめの運用方法
最後に、文字起こしツールのワンポイントアドバイスを一つお伝えしておこう。
録音と同時にリアルタイム変換が可能なツールもあるが、それでも後で音声データをアップロードする方法のほうがおすすめだ。通信状況の悪化やサーバトラブルが原因でアップロードや変換が完了しない場合があるからだ。元の録音データがなくなってしまっては元も子もない。
録音時はあまり余計なことを考えず、確実に録音できる環境の確保に努めるのがいいだろう。
文/小平淳一