全国の大学が箱根駅伝予選会に出場できる意義

箱根駅伝は再来年100回大会を迎える。その記念大会として、来年の予選会は関東圏の大学だけではなく、全国の大学が出場できる。ただ、これはまだ100回大会だけの限定で、それ以降、継続されるかどうか未定だ。箱根駅伝の全国展開は、前から叫ばれていたことだが、大後監督は、全国展開についてどう考えているのだろうか。

――箱根駅伝の全国展開化は、100回大会以降も継続すべきでしょうか。

「とてもデリケートな質問です。私は日本学生陸上競技連合の強化委員を仰せつかっています。あくまで個人的な意見ですが、地区の競技力格差を埋めるためだけを狙うのであれば、箱根駅伝を全国化するのは一定の効果があるのかもしれません。

現在、高校生の上位8割程度が関東学連所属の大学に進学し、一極集中化が現状です。分散化を第一優先事項とするならば、どの地区でも箱根駅伝に挑戦できるということになれば選手は出身地に残る可能性が出てきます」

全国化は必要か? 駅伝界の名伯楽が考える箱根駅伝の未来像_01
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――本当に、箱根の全国化だけで関東一極集中が解消できるのでしょうか。

「一助になる可能性があるということです。多くの高校生が箱根駅伝を目指したとしても、現行では20大学、各チーム10名しか走れません(連合チームを含めれば21チーム)。冷静に考えても狭き門です。また仮に箱根駅伝が全国化されたとしても出場チーム数が増える可能性は低い。

しかし厳しい状況でも箱根駅伝に挑戦する門戸が開かれれば、各地区に将来性のある選手が残り、本格的な選手強化を考える大学も増える可能性があります。結果、選手強化に多様性と多角的という要素が加わり選手の活躍の場が広がることが考えられます。

また今の構図では、実業団チームの強化戦略にも影響を及ぼしてしまっている。どういうことかというと、関西や九州を拠点にしている実業団チームが東京にも拠点を置くようになってきています。理由は関東で活躍した大学生が競技を継続する場合、可能な限り強化環境を変えたくない傾向があるからです。

実業団チーム側も将来性のある選手を招き、マラソン、トラック競技にて日本を代表する選手を育成しながら、駅伝競技でも好成績を収めていきたい。学生の要望に寄り添うために関東地区での強化拠点を準備しなければならない状況があるからです」

――大後監督は、今後も毎年、箱根を全国規模で開催すべきとお考えですか。

「これまでの意見を集約すると、全国化推進派のように思われるかもしれません。しかしながら事はそう容易ではありません。100回大会以降の方向性については、関東学連内でも議論を重ねる必要がありますし、各地区学連を統括する日本学連とも情報を共有し進めていかなければならないと思います。

個人的には全国規模の大会は出雲の選抜駅伝と秩父宮賜杯を掲げる全日本大学駅伝がありますので、この2大会で十分ではないかと思います。その上で学生アスリートの全国的な強化課題をどの様に解決していくのか。必要以上に箱根駅伝に期待するべきではありませんし、箱根駅伝の適切な関わりについての具体的な方策を考えなくてはならないのだと思います」