ライン分けで生まれたメリット

コーチが揃ったところで大後監督はチームの編成を見直した。主戦力が在籍するAライン、主戦力予備のBライン、リハビリ等の必要がある復調ラインの3つのチームに区分けし、それぞれのラインにコーチを立てた。Aラインは大後監督が、Bラインは中野コーチが、復調ラインは松永コーチがそれぞれ担当し、市川コーチは全体をコントロールする役割を担っている。

――全体を大後監督が統括する感じではないのですか。

「各ラインのコーチが独立して指導する体制にしています。練習方法やどのレースに出場するのか等々は、ラインのコーチと選手で決めていきます。その決定を尊重し、私が口出すことはありません。

もちろん、ことある毎にスタッフミーティングを行っているので選手の情報は共有されています。分業制にすることで一人のコーチが見る選手は15人程度です。選手とのコミュニケーションが頻繁に取れるようになり、練習メニューも個別や小グループ単位で提示出来る様になりました。

一番大きい効果は、怪我人が極めて減少したことですね。うちは強豪校と比較すると1年生から箱根出場という感じではなく、2〜3年掛けて育成しなければならない発展途上の選手が多い。必然的に個別にやっていく必要があります。その選手の能力、成熟度に合わせて指導していくので、無理はしませんし、させません。選手に対して目が行き届くようになったのでちょっとした変化にも気づきがあり、故障が少なくなりました。やはり故障がないとチームの雰囲気がグッと上がっていきますね」

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――各ラインを、どのように振り分けているのでしょうか。

「箱根駅伝でシード権を獲得するために、机上の計算では各区間10位内で走ることが必要です。これがどのくらいのレベルかというのは、スピードとスタミナ共に客観的に提示しています。駅伝チームと謳っている以上は出雲駅伝、全日本大学駅伝、そして箱根駅伝に出場して、大学にチームの存在意義を示していかなければなりません。

その上でAラインは、全日本駅伝や箱根駅伝にトライすることが基準になりますので、ハーフマラソンと10000mの能力が判断基準になります。Bラインはまず5000mの自己記録を更新し10000mの実績をつくることがメインです。そしてハーフマラソンの準備をする。

このBラインからAラインに上がってくるという事例がとても重要です。発展途上の選手らに可能性と希望を与え、チーム全体の士気を高める役割を果たしてくれます。復調ラインはBラインに上がっていくための身体づくりと、練習の継続を基本にし、スケジュールを作成しています」