なぜ、テレビに出られないのか

ーープリティ太田さんがデビューして、こびとプロレス界としては盛り上がりましたか?

当時、こびとレスラーがひとりしかいなかったので、こびとプロレス自体が開催されていなかったんです。僕が入ったことによって復活して、対戦相手のミスター・ブッダマンさんと2人で、18年やってきました。僕が入って以降は、こびとレスラーは入ってきていないです。

ーー18年もの間、2人で戦い続けている。続けられたのはなぜですか?

僕がいなくなったら、こびとプロレスがなくなるからです。とにかく僕とブッダマンさんがやれている間に、ひとりでも入ってくれたらなんとか持ちこたえられると思うんで。体がもつ限りやってやろうと。

ーーそこまでしてこびとプロレスを守りたいのは、どうしてなんですか。

最初はそこまで思わなかったんですが、だんだんと日本のこびとプロレスの重要さがわかってきました。僕ひとりで他団体に出させてもらうこともありますが、小人というキャラクターが欲しい場面もあるんです。

もちろん偏見をなくしていくために、との想いもありますが、そもそも海外のプロレスにはこびとレスラーがめちゃくちゃ出ているんです。アメリカ、特にメキシコは強いです。一般のレスラーよりもこびとレスラーのほうが人気があったりもします。スピードが他のレスラーとは違って、速いんですよ。技の入り方も見事で。それに魅了されるんじゃないですか。

「障害者を笑うな!」で衰退。現役こびとレスラーが問う、なんとなくの善意_4
2004年に全日本女子プロレス入門。同年5月のミスター・ブッダマン戦でデビューした。同年、全女が解散したため、「全女最後の新人」でもある

ーー偏見をなくすために意味がある、という点についてもう少し説明していただいてもよろしいですか。

僕らはこびとプロレスを見ていて普通に面白かった。なのに、それを「面白い」と言っちゃいけないというのが、本当によくわからないんです。「かわいそう」って偏見じゃないですか。

今はテレビもコンプライアンスが厳しくなってしまいましたけど、そうした偏見をなくして、僕たちも当たり前のようにテレビに出られるようにしたい。プロレスもそうですけど、やっぱり普通に僕らがテレビ業界に出られることが、一番の起爆剤になると思うんです。

ーー海外の作品にも小人症の方が出てくるものは多いですよね。映画『ロード・オブ・ザ・リング』とか。

そうです。普通に出てるじゃないですか。小人症の人が、当たり前のように。海外はすごいなと思いますよ。

ーー「小人症の人を出すな」みたいな空気ができてしまうと、結局、困るのは小人症の人だと。

僕に言わせれば、「こびとを出すな」という時点で差別でしょう。なんとなくの善意じゃないですか。だから僕はそういう人たちを「偽善者」と言っているんです。