都内の葬儀社や火葬場の話しを聞くと、「少しずつノウハウが蓄積されたことで、立会や拾骨の条件を緩和してきた」という。ただし、それは一部のみで、未だに拾骨が叶わない遺族が多いのも現実だ。
「今年に入ってから立会や拾骨を許可する火葬場も出てきています。ただし、それ以上に対応が出来ないという社も目立つ。難しくしているのはガイドラインの制定は厚労省ですが、葬儀社の実質的な管轄は経産省だということ。つまり強制力は持てないということです。葬儀社側からすると、リスクを考慮して仕方ない部分もあるのですが、遺族の方の気持ちを考えればいたたまれなさを感じます」(都内・葬儀社の担当者)
遺体の保管料5万円
今年2月に父を亡くした吉川さん(仮名・40代)も、やはり死別に立ち会えなかった。
コロナに罹患し、病院での闘病の末亡くなった。遺体は火葬場に直行したが、死亡者増から火葬のスケジュールが詰まっており、2日間の空白の時間が生じた。遺体安置に伴う保管料として、約5万円を追加請求されたという。遺骨となった父がようやく生家の敷居をまたいだのは、亡くなってから3日が経過した後だった。
「父が亡くなり、『病院へ迎えにいくことも、火葬場に行くことも遺族はできない』と葬儀社から説明を受けました。どうしても最後のお別れがしたく火葬場に向かいましたが、『葬儀社以外は入れない』と拒否されました。父の死後、母は明らかに塞ぎ込むようになり、いまだ立ち直れていないんです。もちろん葬儀社のルールがあるのは承知していますが、『父は本当にもういないの?』と気持ちの整理がつけられません。今年春に親を亡くした私の友人も、やはり全く同じ状況でしたね」
取材した2人に共通する想いは、「同じような思いをする人がこれ以上増えないで欲しい」ということだ。天谷さんは、自宅の一室に飾られた遺影をみるたび、「私に出来ることはなかったのか」と自責の念にかられるという。母はいったいどんな思いで、世を去ったのかー。叶わなかった最後の対話を求め、時間を見つけては故郷に眠る母の墓を訪れている。
取材・文/栗田シメイ