こうした問題点を踏まえて、筆者は7月21日の市長記者会見で本件を自ら追及した。以下、その際の質疑を紹介する。

*質疑は上記YouTubeの0分29秒から視聴可能
*外部配信サイト等で動画を再生できない場合は、筆者のYoutubeチャンネル「犬飼淳」 を参照下さい。動画タイトルは「【安倍元総理 記帳所設置の法的根拠は無い】 山中竹春 横浜市長記者会見2022年7月21日」

【犬飼】この横浜市役所の1階ロビーに設置されていた、安倍元総理の記帳所について質問します。首相経験者とはいえ、一国会議員に過ぎない人物の記帳所を横浜市は税金を使ってまで設置しました。その法的根拠をお答え下さい。

【山中竹春 市長】(質問の意味を理解できなかった様子で)法的根拠とは・・、何に対する法的根拠でしょうか?

【犬飼】一国会議員に過ぎない安倍元総理の記帳。それに横浜市が税金を使って対応した法的根拠です。

【山中竹春 市長】横浜市として長らく総理大臣にあった方が、演説中に凶弾に倒れるという類を見ない事件を受けて・・、(言葉に詰まった山中市長に職員が回答用の原稿を渡す)市民の皆様から弔意を希望する声もありましたので、弔意をお受けする場所として記帳所を設置し・・、(再び言葉に詰まり、同席する所管部門の職員に目をやりながら)所管、所管から。

【総務局 佐藤康博 副局長】総務局の副局長の佐藤と申します。特に、こういう法律に決まって運用したということはございません。一般的な事例と言いますか、こうした弔事に対して、規模・内容の中で、行政事務の範疇で実施したということです。

【犬飼】つまり、法的根拠は無いということですね。法的根拠に基づかない行為に公務員を従事させたということなので、それだけでも大問題です。しかも昨日、所管の横浜市 総務局に私が問い合わせたところ、記帳した人数は千人を優に越えている。

ただ、肝心の届け先は「現在も調整中」とのことでした。これ、保管期間が長くなればなるほど、横浜市の個人情報保護条例との整合性の問題も出てきます。というのは、今回の記帳で横浜市は個人情報保護条例で定められた手続きを完全に無視している。

その言い分として「一時的な保管であるから条例の適用外」と主張している。しかし、記帳所の開設は7月11日ですから既に10日以上が経過し、もはや「一時的な保管」と言えないです。「一時的な保管」とは、いったい何日間までと認識しているんですか?

【総務局 佐藤康博 副局長】今、正確に私の方で把握している訳ではありませんけど、所管の市民局 市民情報課と協議する中では、一定程度の範囲であれば可ということで、今回もその範疇と確認しています。

【犬飼】その理屈では、たとえ1年経っても10年経っても「一時的」と言い張れてしまう。そもそも横浜市の個人情報保護条例10条では、実施機関以外への提供は禁じられています。この記帳、廃棄するしか道が無いんじゃないですか?
【総務局 佐藤康博 副局長】基本的には短期間の措置で、適切に保管、及びそれを然るべき機関にお届けするということで確認してしますので、適切に運用されていると理解しています。

【犬飼】届け先、決まったんですか?

【総務局 佐藤康博 副局長】現時点では、まだ調整中です。

【犬飼】いつまで「一時的」と言い張るんですか?

【総務局 佐藤康博 副局長】現在は調整中でございます。

【犬飼】このままではわざわざ税金使ったのに記帳した市民の気持ちまで踏み躙ってしまうのでマズいです。ちゃんと対応して頂きたいと思います。終わります。

出典:7月21日 横浜市長記者会見

天国の安倍元総理も泣いている⁉ 3700人分の追悼記帳を廃棄せざるをえない横浜市の杜撰_2
山中竹春横浜市長

この質疑は、法的根拠のない業務に公務員を従事させたことを横浜市が公の場(市長記者会見)で認めており、非常に大きな意味があったと言える。また、山中市長は質問に対して自らの口では何一つ回答できなかったが、「市民の皆様から弔意を希望する声もありました」という非常に気掛かりな発言をしている。

先ほども説明した通り、安倍元総理の訃報が7月8日(金)夜に流れてから横浜市が11日(月)に記帳所を設置するまでの間、土日を挟んで役所としての業務時間がほとんど無い。いったいどのように市民の声を聞いたというのか。