新コアカリキュラムが見据えるもの

フィンランドでは10年に一度、小中学校の学習指導方針「ナショナル・コアカリキュラム」が発表される。新コアカリキュラムは2014年に作成され、2016年秋から段階的に導入が開始された。

10年ごとの新コアカリキュラム作成にあたっては、国家教育委員会の専門家に加え、教職員、保護者の代表、研究者など多くの人たちが関わる。今回、最も重視されたのは学力調査の結果ではなく、まずは子どもたちの心身の健康と学習意欲の向上、今の時代にあった授業の在り方、そして将来必要な知識やスキルといったことだった。

将来、AI技術の進展により多くの職業が消えてしまうと言われている。そのような中では、学びに対して積極的で柔軟な考え方ができる人間が求められる。批判的・創造的な見方も欠かせない。

一方で、子どもたちは一人ひとり、学び方も学ぶスピードも異なる。そこで、個々に応じて能力を伸ばしていけるような学び方を提供していくことも、新コアカリキュラムに盛り込まれた。タブレットなどデジタル機器を授業に取り入れることも、子どもたちにとっては興味や意欲の向上につながる。そして学習の結果よりも一人ひとりの幸福感を重視し、学習や学校を楽しいものにすることが目指されている。

さらに現代社会では、他者との協力なしに仕事をすることは不可能だ。そこで、小さな時から多様性を受け入れ、クラスメイトや教師、家族と積極的に協力し合う経験を重視する内容が盛り込まれている。

確かなことは、コアカリキュラムが変わっても、授業数が増えるわけでも、夏休みが短くなるわけでもないという点だ。休む時にはきちんと休むからこそ、勉強する時にはちゃんと頭に入ってくるし集中できる、という考え方なのだろう。

新コアカリキュラムでは、人間として、市民としての成長のため、以下の7つの能力(コンピテンシー)を子どもたちが身につけることを、カギとして掲げている。

1、思考と学びのための学び
2、文化的能力、相互コミュニケーション、自己表現
3、自律、自立
4、マルチリテラシー(言葉の読み書きだけでなく、様々な情報を検索し、理解、解釈、分析、表現ができること)
5、ICT(情報通信技術)の活用
6、働くための能力、起業家精神
7、社会参加、関与、サステナブルな未来を構築する

この新コアカリキュラムをベースにして、その後、各自治体が各地の事情も考慮して地域ごとのカリキュラムを作成。さらにそれをもとにして各学校のカリキュラムへと落とし込まれた。