問題はイスラームではなく家父長制的な価値観

内藤 山本前代表も言われたことですが、より大きな問題は、実はイスラームではなくて、家父長制的、父権主義的な価値観のほうだと思います。これは日本にもありましたし、どこにもあったことです。

日本でも実際、戦後間もなくの頃の女性の大学進学率を見れば4~5%ぐらいだったわけですし、最近も医科大学の入試で女子生徒のほうが高得点を取る人が多いので、男子の点数に加点していたという問題がありましたよね。日本にも、女性に対する蔑視を基に教育制度を維持してきたという汚点があります。

こうした家父長制的な面は、イスラームと直接関係する部分と、関係していない部分とがあります。

たとえば、女の子は教育を受けさせてもらえないとか、学校に行く権利も否定される。これはもっぱら家父長制の問題であって、イスラームでは否定していません。しかし実際、家々で家長である父親の権限が強くて、「女の子は学校に行かせない」という問題が起きてくるわけです。イスラーム指導者は、こういう伝統的価値を否定しようとしない。でも純粋に宗教的に言うなら、女性であっても教育を受ける権利は認めなければおかしい。

考えてみれば、日本だって女性の進学を妨げたのは、神道でも仏教でもないことは明らかです。それより家父長的な価値観ですよね。

本当にイスラームで「絶対禁止」と言っていることは限られています。この5月にタリバンが女性の服装規定を厳しくして、罰則まで設けましたが、服装規定に違反した女性ではなく、近親者の男性を罰するとしています。私は、ここに注目しています。

タリバンは、女性に配慮したつもりかもしれませんが、いわば「監督不行き届き」ということで男性を罰するのは、一層悪い結果を招きます。家父長の権限を、より一層、強化することになるからです。

山本 そうでしょうね。