非常に“戦略的”なiPhone 14シリーズ
今回のラインナップで留意すべきことは、 スタンダードモデルのiPhone 14に、昨年のiPhone 13と同じ「A15Bionic」チップが採用されている点だ。
これまでスタンダードモデル、プロモデルの双方で同じチップが用いられてきたことを考えると、その進化の速度にブレーキをかけたことになる。
別の見方をすれば、スタンダードモデルとプロモデルに、より明確な性能の差を設けたともいえる。スマートフォン業界全体を見渡したときに、A15 Bionicチップはまだまだ競争力を失っていない。特に省電力性とパフォーマンスを両立していることや、機械学習処理における演算性能は非常に高い。
現在のスマホ市場の注目は「5Gへの移行」にあり、その傾向は向こう3〜5年続くだろう。現在Appleが持つ商品性・ブランド・競争力を維持すること、またAndroidスマートフォンからの乗り換えを引き続き維持することで、AppleはiPhoneのビジネスをさらに成長させることができるのだ。
その点でiPhone 14は、「大画面で軽いスマホを、より安い価格で入手したい」という顧客ニーズに応えながら、それでいてバッテリーとカメラ性能を高めるという、堅実で、しかし最も有効な戦略を採っている。Appleが気にしているのは、他社製品との比較以上に、iPhoneを手に取った人の顧客満足度だ。
限られた時間ながら実機を触ってみたところ、iPhone 14のカメラ性能はかなり期待できる。昨年より3万円安い価格で、iPhone 13 Pro以上のカメラ性能が手に入ると言って差し支えないだろう。
iPhone 14のセンサーシフト光学手ぶれ補正を備えた広角レンズは、iPhone 13 Proシリーズと同等で、新たに搭載された「Photonic Engine」による写真処理の刷新、さらにiOS 16の画像処理コアの刷新も相まって、暗所やポートレートモードの撮影に限らず「明確に違いがわかる」レベルの高画質化が期待できる。