超高齢社会で若者の価値は上がり…
このことから、日本の若者が内向きに見える理由はものすごく簡単に説明できる。
長い不況に苦しんでいるとはいえ、日本はいまだにGDPで世界3位の経済大国だ。そんな国に生まれた若者たちが、海外で大きなリスクを取るよりも、ぜいたくをいわなければそこそこ暮らしていける日本にとどまった方がいいと考えるのはきわめて合理的だ。
日本は人類史上、未曾有の超高齢社会に突入し、若者(現役世代)の両肩には膨張する一方の社会保障費が重くのしかかっている。このような社会で“夢”をもてなくなるのは当たり前だが、しかしこのことは、視点を変えれば若者に有利にはたらく。経済学の基本である需要と供給の法則をもちだすまでもなく、希少なものは価値が高く、たくさんあるものは価値が低い。日本社会において希少なのは若者であり、たくさんあるものは高齢者だ。
一般的には平均年齢の低いピラミッド型の人口構成が理想とされるが、こうした国はどこも若者の失業率が高く、学生を除けば、イタリアでは20代の3人に1人、フランスでは4人に1人が失業している。それに対して日本の若年失業率は一貫してOECDで最も低く、大学を卒業すれば、ほぼ全員がそれなりの会社に就職できる。だとしたらなぜ、この大きなアドバンテージを捨てて、より競争のきびしい海外に行かなければならないのか。
それに加えて、たまたま新卒で入った会社に定年まで滅私奉公するという働き方が機能不全を起こしたことで、いまでは大手企業も積極的に即戦力を中途採用するようになった。だとしたら、とりあえずどこかに入って仕事を覚え、転職によってステップアップしていくことが「キャリアというRPG(ロールプレイングゲーム)」を攻略する最適戦略になるだろう。