脚本・坂元裕二、演出・水田伸生、プロデューサー・次屋尚。
彼らがタッグを組んだ作品といえば、松雪泰子×芦田愛菜の『Mother』、満島ひかり演じる小春を中心に“母と子の関係”に焦点を当てた『Woman』、「真実の人間愛」に迫った広瀬すず主演の『anone』がある。そのどれもが一貫して“人間”や“愛”を浮き彫りにしようとしている印象だ。
そんな3人による最新作は「小洒落てこじれたミステリアスコメディ」と銘打たれた『初恋の悪魔』(日本テレビ系、現在放送中)。今回も人間愛”が軸になっているように思える。本稿では先述した4作品から、彼らが提示しようとしている人間愛の形を読み解きたい。
『Mother』で描く“母性”
松雪泰子主演、子役として芦田愛菜が出演した『Mother』は、「母性とは何か」をテーマに描かれた社会派ドラマ。芦田愛菜演じる道木怜南(偽名・鈴原継美)が虐待・ネグレクトに遭っているのを発見した奈緒(松雪泰子)が、怜南を誘拐し“母”になろうとする物語である。
世の中で“母性”と言われているものは、何なのか。一人の女性が妊娠・出産を経れば、自動的に母性が生まれ、母となるのだろうか。半ば“母性”を神格的に奉ろうとする世間に対し、あらためて目を開こうと投げかけている作品にも感じる。
1話の終盤にて、奈緒が怜南に対し「あなたは捨てられたんじゃない。あなたが捨てるの」と告げるシーンがある。実母を捨てる覚悟を決めさせるとともに、奈緒自身も母親になる決意をした象徴的なシーンだ。
奈緒と怜南に血の繋がりはないが、時間をともにするにつれ、本物の親子と近い関係性になっていく。丁寧に積み重ねた時間は血縁よりも濃くなったように見えるが、怜南の実母である道木仁美(尾野真千子)が再び姿を現したことをきっかけに、「母になるための条件」を顧みざるを得なくなる。